成熟した男性を目指すならそれ相応の装い術や嗜みの作法を身につけておきたいものだ。古今の映画に精通する綿谷画伯が印象に残った、映画のワンシーンから切り取りそれらを解説する。
今月のお題 カントリーシーンに見る英国貴族文化
絵と文・綿谷 寛
過日、元小誌連載担当で、現在MEN’S EX ONLINE編集長のヒラサワちゃんと東京ステーションホテル内のバー「オーク」でしっぽり二人飲み。といっても忍ぶような中ではなく、ウェブで連載を!と打ち合わせを兼ねた飲み。テーマはバー。今オレがもっとも夢中になってる趣味でもあるのでこれは嬉しい。その話に乗った!毎回素敵なお店を紹介すると共に、初心者でもこれを知っておけば通を気取れるお役立ち情報など、イラストと文章で綴るバー連載。乞うご期待!
英国貴族気分で始めた狩猟で危うく使用人になりかけた話
狩猟から足を洗って10年経つけれど、11月の解禁の知らせを聞くと今もってウズウズしてくる狩猟の世界。また猟犬と縁があれば再開したいと思う今日この頃。久しぶりに映画『ゴスフォード・パーク』(’01年イギリス)を観た。
舞台は1932年11月。ロンドン郊外の田園地帯にそびえ立つ”ゴスフォード・パーク”というカントリーハウス。ここで当主のウィリアム・マッコードル卿(マイケル・ガンボン)とシルヴィア夫人(クリスティン・スコット・トーマス)主催のパーティが催された。招待客は貴族やハリウッドの映画スター、映画プロデューサーの面々。昼間はキジ猟や外でランチを楽しみ、夜はディナーや食後のお喋りを楽しんだりと、優雅に時が流れてゆく中でマッコードル卿が殺害された! 容疑者はゴスフォード・パークにいた全員……と、物語はミステリーの味付けをした名匠ロバート・アルトマン監督得意の群像劇だけれど、脚本はこの映画でアカデミー脚本賞を受賞し、その後人気英国貴族ドラマシリーズ『ダウントン・アビー』の制作、脚本を手がけたジュリアン・フェローズ(この方も貴族の出身)とくれば、貴族描写はお手のもの。新しい時代の流れの中で衰退していく貴族社会が、時にそこで働く使用人の視点で、時に貴族たちに見下されるアメリカ人の視点で皮肉たっぷりに描かれる。