「リーダーたちの本とメガネ」ボッシュ 下山田 淳氏

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リーダーたちの本とメガネ

リーダーとしてビジネスを牽引する男たちが愛読する本&愛用するメガネ。そこには、日々、厳しい競争の中で奮闘する彼らの思考法やビジネス哲学が宿っている。

下山田 淳氏

ボッシュ 渋谷本社事務所長
コーポレート・コミュニケーション部 ゼネラル・マネージャー
本社管理部門 渋谷施設管理部 ゼネラル・マネージャー
下山田 淳氏

東京都生まれ。幼少期をドイツ、高校および大学時代をアメリカで過ごす。米・ウェイクフォレスト大学卒業。ソニー株式会社入社後、広報、ブランドマーケティング、CEO室、ロケーションブランディングなどを経て、2013年にボッシュ株式会社入社。ブランドの認知向上策・ブランドタッチポイントとして渋谷本社1階にボッシュグループとして世界初となる商業カフェ「cafe 1886 at Bosch」を 企画・立案。’15年のオープン以来、多くの来客で賑わっている。

チャレンジ精神はソニーが教えてくれた

経営者について書かれた本はあまた出版されているが、経営者の想いを知りたければ、経営者自身が書いた本を読むことだろう。

ドイツを拠点とする自動車機器サプライヤー「ボッシュ」のコーポレート・コミュニケーション部でゼネラル・マネージャーを務める下山田 淳氏は、まさにその実践者。特にソニーの歴代経営者には大いに刺激されたそうだ。

「種明かしをするようですが、私は大学卒業から数年前までソニーの社員でした。そもそも、あの会社は私にとって恩人のような存在。父親の仕事の都合で、幼い頃から海外生活が長く、日本人としてのアイデンティティや誇りを失いかけていた私を、その高い技術力で海外に名を轟かせていたソニーが商品を介して救ってくれたんです。そんな経験もあって、私は一も二もなくソニー入社を希望し、運よくその一員となったわけですが、社内に居ても会社全体の事業戦略や経営者の考えを知る機会はなかなかありません。そこで私は、彼らの著書を読み漁ったのです」

そう語る下山田氏の顔つきからは、ソニーに対しての並大抵でないリスペクトが見て取れた。そこで、単刀直入に「ソニーの何が凄いのか?」と訊ねてみた。すると、氏は迷わず「チャレンジ精神」というワードを挙げたのである。

「ソニーは戦後まもなく日本で発足し、オーディオ、テレビなど、そしてゲームのハードウェアで世界市場を開拓。その後、音楽や映画などのソフトを通じて成長しました。製造業中心の”技術集約型企業”から”知識集約型企業”へのビジネスモデルの変革も含めて、チャレンジを重ねてきたのです。なので、紆余曲折や失敗は当たり前。大事なのは、恐れず前に進むこと。その”ソニースピリット”を、私は特に社長・会長を務めた大賀典雄氏から授かりました。彼の著作『大賀典雄、15歳に「夢」を語る』を読むと、チャレンジ精神と情熱を持つことが、仕事にはいかに大切であるか納得できるに違いありません」

大賀典雄は世界で初めてCDプレイヤー、ソフトをリリースし、現在のソニーのみならず、世界の音楽産業の礎を築いた人物だ。その偉大なる先人から薫陶を受けた下山田氏は、幼少時およびソニーでの海外赴任を通じて得たドイツとの縁からボッシュに転職し、4年前にはグループとして世界初の商業カフェを、渋谷にある本社の一角に開業させた。社内の説得に苦労したカフェも、それまで培ったチャレンジ精神で粘り強く日本のトップとドイツ本社を説得した。

「ソニー時代、私は大賀氏の指示でベルリンに赴任し、壁崩壊後のポツダム広場にソニーセンター(映画館やレストランが並ぶ都市型複合施設)を建設するプロジェクトに携わりました。そこで組織と社会の新しい関係づくりを学び、ボッシュでそれを活かしたのです」

そう言って、下山田氏は1冊の本を取り出した。東京大学の名誉教授である清水 博氏が書いた『場の思想』という本である。

「互いの違いを認めて共に生きる。そんな社会をどうつくればいいのか。主体と客体を分離するのではなく、主客一体の在り方が説かれています。ベルリンのソニーセンターも、ボッシュのカフェもちょうどこれと同じ考え方で、目にしたときは興奮し、その勢いで著者に会いに行ったくらい。これからの時代のマーケティングとして有効だと、私は認識していますね」

清潔感のある佇まいで相手を話に引き込む

それにしても下山田氏は話術が巧みだ。立て板に水のごとく言葉を繰り出し、相手を引き込んでいく。それに一役買っていると言えそうなのが、その佇まいだ。決して押し出しは強くない。だが、内に秘める情熱が時折顔を覗かせるといった風情で、実に好印象である。

「月並みなことで恐縮ですが、機能性を重視しています。そして、職人の確かな技術にも惹かれます。私自身、高い技術力を持つドイツとのかかわりが強かったことが影響しているのかもしれません」

そう話す下山田氏が選ぶメガネは、メガネの名産地である福井・鯖江の職人技が息づくブランド「ジャポニスム」の一本。普遍性を感じられるデザインが魅力的だ。

「デザインはもちろん、例えばこめかみを圧迫しないように外側に反らせたテンプルの設計など、掛ける人に配慮した工夫が素晴らしい。私はモンブランの筆記具を愛用していますが、端正で控えめながら、長く使い続けられる高い機能性を持っているところが共通しているような気がします。身に着けるものには、その人の考え方や思想が宿る。ヨーロッパの人たちとの交流を通して得たその考え方が、私の中にもいつの間にか染みついたのかもしれません」

2024

VOL.341

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