「バルミューダ」寺尾社長に聞いた! 本当のクリエイティブとは─?【加藤綾子/一流思考のヒント】

NULL
Facebook
Twitter
友だち追加

「カトパン」ことフリーアナウンサーの加藤綾子さんが一流のトップに組織マネジメントや成功のヒントを探り、そっとシェアする「一流思考のヒント」連載。

第6回「バルミューダ」代表取締役社長 寺尾 玄さん[前編]

加藤 綾子さん、寺尾 玄さん

※最後に加藤綾子さんのスペシャルフォトギャラリー付き!

Profile
加藤綾子 Ayako Kato
1985年生まれ。2008年フジテレビ入社。2016年よりフリーアナウンサーになり、活躍の場を広げる。現在はフジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「世界に発信!SNS英語術」にレギュラー出演中。連ドラ初レギュラーとして出演したTBS系日曜劇場「ブラックペアン」も話題に。

寺尾 玄 Gen Terao
1973年生まれ。高校中退後、欧州各国を1年放浪。帰国後10年間音楽活動に携わり、2001年に物作りの道を志し、独学でスキルを取得する。2003年有限会社バルミューダデザイン(現バルミューダ株式会社)を設立。

本当のクリエイティブとはその枠自体を疑って、『いっそこうやったらどうですかね』とルールすら変えることだと思います
(寺尾さん)

便利さだけでなくうれしさで選ばれる商品を

加藤お世話になっている美容師さんがバルミューダの製品を愛用していて、ご両親にもプレゼントしたらすごく喜ばれたと言っていました。でも「また買おうと思ったら品切れで」と嘆いていて。

寺尾バルミューダのトースターは発売して2年半経っても売れ続けていて、口コミの底力みたいなものを感じています。我々は「物より体験」というコンセプトで商売をしていますけど、驚いたことって人に言いたくなるじゃないですか?

加藤本当にそうですね。

寺尾ほとんどの家電は壊れたときの買い替え需要や、一人暮らしや結婚など人生の節目などを見込んで作られていますが、我々は便利さだけでなくうれしさで選ばれたいと思っています。そういう意味ではデザインもうれしさをほんのり感じてもらえるものであるべきだと思っているので、パッと見て「かっこいい!」っていう必要はない。存在感が強すぎて生活にそぐわないデザインは選ばれないんです。

加藤確かにシンプルなデザインではありますが、海外の家電のようなおしゃれさは十分に感じます。

寺尾海外のメーカーだと思われることはたまにあって、それは私が17歳で高校を辞めて、バックパックでヨーロッパを放浪した経験が影響しているのかなと。

加藤特に影響を受けた経験は何だったんですか?

寺尾一瞬の景色のようなものだったりするんですけど、スペイン南部に全体が洞窟から成っているセテニルという村があるんです。最初に訪れたとき、ちょうど強い夕日が差し込む時間帯で教会の塔の周りを無数のツバメが飛び回っていたんですが、一羽一羽がきらきら光っていて、本当に美しかった。しかも洞窟のドアを開けたら住居になっていて、放浪の旅ではそういう驚きが日々ありました。

加藤素敵ですね。

寺尾洞窟に住むとかもそうですけど、あるものを大切に使おうとか、別に不便じゃないから買い換えなくていいといったヨーロッパの文化には、深みを感じます。日本はちょっと新しくしすぎかなというきらいがある。今、製品のデザインのディレクションをやっていても、「ちょっとやりすぎなんじゃないか」というさじ加減は、旅で培われた美意識が少なからずベースになっている気もします。

加藤やりすぎると売れない?

寺尾2003年に創業してしばらくはデザインも担当していたんですが、自分が欲しいものにこだわりすぎて、注文が1ヶ月以上入らなかったときは、完全に倒産するなと思いました。

加藤でも、そこからバルミューダのサクセスストーリーが始まるわけですよね。

寺尾ある日、ロイヤルホストの前を通ったんです。当時はリーマンショックで世界的な金融危機の時期でもあったのに、みんな幸せそうに食事をしていて、最初は「こっちは会社が倒産しそうなのに」と腹が立った。実は僕はバルミューダを創業する前、音楽を10年近くやっていて、本気でロックスターになれると思っていたんです。でも、なれなかった。だから「今回もまた無理なのか。自分は成功と縁がない人間なのかもしれない」と思いました。でも、次の瞬間に「わかった!」と思ったんです。我々の商品は必要がないから売れないんだと。お客様に必要とされ喜ばれる物作りを、私はほとんど考えていなかったんだと思います。

加藤その後、どうやって倒産危機から抜け出されたんですか?

寺尾持っていたアイデアの中で一番自信があった扇風機の開発に取り掛かりました。従来の暑い空気をかき混ぜるだけで、当たり続けるとつらくなるような強い風ではない、自然界の涼しく隠やかな風を送り出したい。とても新製品を作れる状況じゃなかったですけど、どうせ倒れるなら、後ろではなく前に倒れようと思いました。

2024

VOL.341

Spring

  1. 1
2
LINE
SmartNews
ビジネスの装いルール完全BOOK
星のや
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE
pagetop