自然と人に癒されながらハワイのパワーを身体に迎え入れて

知らず知らずのうちにハワイパワーの恩恵を受けていた私は、今回の取材では意識して、パワースポットなるものを体感することにした。
まず、現地の方にお勧め頂いたラナイルックアウトへ。ワイキキからクルマで東へ20分。心地よい風を浴びながら少し移動するだけで、同じオアフなのに海の色と様子が変わる。ここは溶岩石の海岸。勿論切り立った崖もあるのだが、私が下り立った所は人の手によって緩やかに作られたと思ってしまうほど優しい岩場。海際までゆっくりと降り、そこでパワーを蓄えなさい……と、神様が我々に与えて下さったかのような場所であった。
岩場に立っていると、時々強く打ち寄せる波のしぶきが細かいミスト状になり、身体に降りかかる。天気の良い日には、ここからラナイ島やモロカイ島が見え、その雄大な景色を眺めているだけで日ごろの憂さがいつの間にか何処かへ……。
早朝からの撮影であったが、この地を離れる時は皆顔つきが温和になり、自然と笑顔になっていた。雄大で美しい景色を眺めていると、己の小ささはもちろん、人間は生きているのではなく、生かされているのだな?と、しみじみ感じてしまう。
自然に癒された後は、人に癒されようと、ラナイルックアウトから東南に下った場所にあるマカプウという海岸のヒーリングプールへ。なだらかな黒褐色の岩場のそこここに、海水が溜まった天然のプールが出来ている。ここもオアフ有数のパワースポットで、特別な癒しの能力を持ったヒーラーが修行をすることもあるのだという。
そんなヒーラーの中でも長いキャリアを持つカフ・ラヘラさんに来て頂き、ヒーリング体験をすることに。
ヒーリングプールに足首の上あたりまで浸かると、彼女が大きなティーリーフで私のカラダの周りをお祓いのような仕草で清め始める。そして、オリと呼ばれる祈りの詞を唱えながら手を握っていてくれるのだが、なんと言ったらよいか、足先に打ち寄せる小波とあいまって、きっと母胎の中にいる時ってこんな感じだったのではなかろうかと思ってしまうほど気持ちがほぐれ、安心してしまうのである。人を治療することを「手当て」というが、医学が進歩する前は人の手を当てることが最大の治療であったのであろうことがよく分かる。自然と人に癒され、ほっこりした気持ちになった。
1年のうち、ハワイ旅行もせいぜい1、2回。長期の休みをとって滞在したいとよく思うのだが、なかなか実現できずにいる。帰国する日が近づくと、他国を訪れた時より現実の生活へ戻ることへのふん切りがつきにくい。その理由のひとつが、帰国日前日の夕方に見る夕陽の美しさ。日本でも日は昇り、日は沈む。当たり前の日々の営み。しかし、ここで見る夕陽は何か特別な感じがしてならない。滞在中の楽しかったことを思い出し、又この地を訪れることをそっと心に誓うのである。
日は昇り、日は沈む。当たり前の営みなのに、ハワイのサンセットは、特別な感情を呼び起こす。
─そして、またこの地を訪れようと、そっと心に誓うのです。

[MEN’S EX 2013年12月号の記事を再構成]
題字・文/中井貴一 撮影/RyanTFoley ヘアメイク/藤井俊二 構成/松阿彌靖 コーディネート/工藤まや(Maka’alaProductions)