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中井貴一さん

各々がいかに相手でなく、自分と勝負するか。
全員が同じ方向を向いているのが、ゴルフというスポーツの魅力でもあります。

高原の丘陵を生かした「蓼科高原カントリー」は、美しい景観の下、すずらん、りんどう、しゃくなげと戦略性に富んだ計3コース27ホールが広がる。大きな池と橋が美しい「りんどう」の名物ホール、1番にて。【蓼科高原カントリークラブ】長野県茅野市北山4035番地 ☎0266-67-2201

ゴルフは人が良く見える。そして思い出す、あの人のこと。

ゴルフは人が良く見える。1日共に過ごすということも理由であろうが、それだけではない。テニスは相対して戦うスポーツだが、逆にゴルフは、対戦相手と同じ方向に進んでいくスポーツである。それゆえ、このスポーツはメンタルなものが強く、他人との勝負より、己と、自然との勝負となってくる。まさに人生の縮図だ。会社で、接待としてゴルフが使われる理由も納得できる。普段、温厚であんな良い人が……、エッ?という事も、その全く逆もある。

これに関して思い出すのが、故・相米慎二監督である。『東京上空いらっしゃいませ』という映画のお話をいただき、初顔合わせの場が設けられた。相米さん、プロデューサー、そして私の3人がその場にいたのだが、みんな人見知りで約1時間半、ほとんど口をきかなかったのだ。この空気に耐えかねた相米さんが、私が席を外した間に「これはしんどい、あいつをゴルフに誘ってくれ」とプロデューサーに頼んだらしい。実は私も「もうこの映画やめよう」ぐらいに思っていたのだが、一緒にゴルフをやってみたら……。意外にも打ち解けて、すごく楽しく一日が過ごせたのだ。相米監督にも信頼できる人柄を感じることができた。もっとも現場に入ると、大変な人だということを知ることになるのだが……。

その後、相米さんとはプライベートでも付き合うようになり、「メシ食わせてくれ」という電話がかかってくることもあった。一緒に食事をしていると、相米さんが店の女将に「トイレに掛かっているあの絵、いいな」などと言う。女将も「そうですか、ありがとうございます」と通り一遍の受け答えをしていたかと思いきや、帰り際に「どうぞお持ちください」と、その絵が包んであったりする。相米さんには、欲しいというつもりは全くないのだが、何故かそうさせてしまう空気を持っている人だった。

最後に話したときだったか、「お前さ、プロデュースやれよ。今、映画界はプロデューサーの人材不足だから」と言われたことを覚えている。「まだいいですよ」と、そのときはかわしたが、その後、映画や舞台のプロデュースに関わる機会ができてきた。そこには、彼の言葉が強く影響しているのを自覚している。今でも、これをやったら相米さんはどう思うかな、と考えることがある。何か、指針というか、基準になっているような人でもあった。そんな人物との縁を取り持ってくれたのもゴルフだった。

今でも大切に持っている、亡き父・佐田啓二さんの愛用クラブ。ドライバーはマグレガー、パターはボブ・トスキ、スポルディング、マグレガー。

今でも大切に持っている、亡き父・佐田啓二さんの愛用クラブ。ドライバーはマグレガー、パターはボブ・トスキ、スポルディング、マグレガー。

京都から駆けつけていただいたのは、中井さんの友人でゴルフ仲間のお2人。左は現代風質店「よろず屋」社長の加藤 学さん、右は老舗漬物店「打田漬物」社長の打田学市さん、終日、“笑いっぱなし”のラウンドだった。

京都から駆けつけていただいたのは、中井さんの友人でゴルフ仲間のお2人。左は現代風質店「よろず屋」社長の加藤 学さん、右は老舗漬物店「打田漬物」社長の打田学市さん、終日、“笑いっぱなし”のラウンドだった。

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