【中井貴一の好貴心】vol.5《"笑いとマナー"のゴルフ論》

bool(false)

誰しも大人になったな、と感じた瞬間があるでしょう。
例えば、初めてタバコを吸ったとき、初めて高級な寿司屋のカウンターに座ったとき……。
私の場合、初めてゴルフをラウンドしたときがそうでした。
今回のテーマはゴルフ。
撮影は前回の蓼科に続き、蓼科高原カントリークラブへ。
創立50周年の由緒あるクラブで、ゴルフ好きだった父、佐田啓二も創立当初からのメンバーでした。
実は、私はゴルフにそれほどハマったことがない……、
そういうと驚かれるのですが、それも含めて二人の友人とラウンドを楽しみながら、私のゴルフ観を思いつくままに。

ゴルフ 中井貴一さん
俳優佐田啓二さんが蓼科に別荘を建てたのと同じ50年前に創業した、蓼科高原カントリークラブ。中井さんが子どもの頃、「平屋建てのクラブハウスは鉄のスパイクが滑らないように廊下の木に油が塗ってあり、鉄道の枕木のような香りがした」のだとか。ゴルフをする父を「大人だな」と感じていた中井さんが、初めてこのコースをラウンドしたのは、およそ10年前のこと。”大人に追いついた”中井さんお気に入りの「すずらん」コースのスタートホールにて、渾身のティーショット!

スコアよりも、どれだけ笑ったか。だからマナーを重視するのが中井流

俳優という職業をしていると、この連載のM.E.もしかり、取材をしていただく機会がよくある。その中で、私には苦手な質問がある。それは、「趣味はなんですか?」である。「ありません」と答えるのも、面白くない人間のようだし、その場で、即興で趣味を作るのも偽装に過ぎない。読書、演劇鑑賞、映画鑑賞……等々、趣味らしい物を頭に浮かべてみるのだが、これら全て自分の職業の延長で、研究材料とはいえども純粋に趣味と呼べるものではない。考えてみると、この職業自体が今や人生をかけた趣味といっても過言ではないのだ。しかし、今の仕事が趣味ですというのも、こんなに苦しいことが趣味であるはずがない……と否定的になってしまう。

そこで、思いつくのがゴルフ。初めてのゴルフは、20歳の時。映画の打ち上げで、半ば強制的にゴルフ場へ。練習ゼロ、勿論ルールも良く分からないまま。テレビでゴルフの試合は見たこともあったので、こんな感じでやるのだろう、ということだけは知識の中にあった。急遽、ハーフセットを買い(もちろん当時はパーシモン)、パターはゴルフ好きだった父が使っていた形見のセットで臨んだように記憶している。

テニスとゴルフは、全く違うスポーツなのだが、動いている球と止まっている球の違いはあれ、ボールに対してのインパクトの瞬間は非常に似ている。そのせいか、初ゴルフでも空振りゼロ、当たればそこそこ飛んだ。スコアも初回にして、きちんと数えられる範囲にまとまった。

しかし、これがいけなかった。もっと苦労をしていたら、悔しさから練習を重ね、ゴルフにハマっていたかもしれない。しかし当時体力をもてあましていた私にはゴルフは運動量が足りないとか、朝早いのもいかがなものか……と難癖をつけ、5?6年ゴルフから遠ざかったのである。

その後再開するのだが、コースに出るのは年間6~7回程度という”なんちゃって”ゴルファー。現在もそれが続いているのだが……。基本的に不器用な私は、作品に入ってしまうと、休みがあっても中々ゴルフをする気にはなれないし、仮に行っても、切り替えが下手なのか、グリーンの上でも芝居の事を考えてしまうのだ。

しかし「ゴルフは好き?」と問われれば、「はい、大好きです」と、答えるだろう。芝居から離れ、あのグリーンの上に立った時の爽快感、開放感。もう、これだけで十分なのである。私にとってのゴルフは、正直スコアではない。ゴルフは、一日仕事。だからこそ、気の置けない仲間と、どれだけ楽しく良い一日を過ごせたかが、最も重要なのである。スコア表には、笑った数を記入したいと常々思っている(笑)。そのためには、楽しめるだけの技術、特にマナーは、持ち合わせていなければならないのは当然のこと。これは、私の持論である。

今回のゴルフには、京都から友人2人が駆けつけてくれた。笑いの打数だったら、優に200は越えるであろう、楽し過ぎる仲間である。

ご飯と一緒で、ゴルフは一緒に回る”人”が大事。
だから今日は、”一番笑える”2人とともに

ゴルフ 中井貴一さん
今でも大切に持っている、亡き父・佐田啓二さんの愛用クラブ。ドライバーはマグレガー、パターはボブ・トスキ、スポルディング、マグレガー。

今でも大切に持っている、亡き父・佐田啓二さんの愛用クラブ。ドライバーはマグレガー、パターはボブ・トスキ、スポルディング、マグレガー。

京都から駆けつけていただいたのは、中井さんの友人でゴルフ仲間のお2人。左は現代風質店「よろず屋」社長の加藤 学さん、右は老舗漬物店「打田漬物」社長の打田学市さん、終日、“笑いっぱなし”のラウンドだった。

京都から駆けつけていただいたのは、中井さんの友人でゴルフ仲間のお2人。左は現代風質店「よろず屋」社長の加藤 学さん、右は老舗漬物店「打田漬物」社長の打田学市さん、終日、“笑いっぱなし”のラウンドだった。

2025

VOL.343

Winter

  1. 1
2
SmartNews
ビジネスの装いルール完全BOOK
  • Facebook
  • X
  • Instagram
  • YouTube
  • Facebook
  • X
  • Instagram
  • YouTube
pagetop