翌朝、今度は自分でステアリングを握り、撮影ポイントを求めて神戸方面へ向かう。実は今回の取材では、撮影用の伴走車としてもう1台のベンテイガが同行することになった。ベンテイガに乗りながらベンテイガの走る姿をじっくり観察できる、またとないチャンスである。
道すがら他のSUVと見比べてみても、ベンテイガが醸し出す気品はやはり別格だ。モノの精度が一桁違うというほかない。まずヘッドランプやリアコンビランプの造形がシンプルでギラついていないこと。無敵の印籠「フライングBエンブレム」を敢えて控えめなサイズにしていること。クロームメッキのトリムが細くフラットで、その細さのバランスも綿密に計算されていること。さらに、Rの大きな曲面からエッジの立ったキャラクターラインまでアルミの一枚板で連続的に表現できる「スーパーフォーミング」という成型技術のおかげで、ボディの陰影や映り込みが驚くほど鮮やかなこと。そうしたディテールが積み上げられて、これ見よがしな派手さはないのに、何だか普通じゃない高貴なクルマに見えるのだ。SUVという新たな枠組みのなかで、ベントレー・ファミリーの一員にふさわしいトーン&マナーを完璧に実践する。そこにベンテイガの新しさがあるのだと思った。
ベンテイガに試乗するのは一昨年の導入直後に続いて2度目である。最初は2016年8月登録の右ハンドル車、今回が2017年12月登録の左ハンドル車で、タイヤは前回も今回もオプションサイズとなる22インチのP-ZERO。とてもそんなプロファイルのタイヤを履いているとは思えない、角の取れた滑らかな乗り心地だ。最初に乗ったときは想像以上にアジリティ志向というか、イメージに反して軽やかな走りに驚かされたが、その印象は今回も基本的に変わらず、言い訳なしのドライバーズカーに仕立てられている。48Vの高電圧で強力かつ俊敏に駆動されるベントレー・ダイナミックライド(アクティブロールコントロール)のご利益か、背の高いクルマにありがちなグラリと来るロール感もほぼゼロ。凄い時代になったものである。なお、ステアリング位置の違いによる特段の印象変化も感じられず、左に乗り慣れた人は左、そうでない人は右を素直に選んで大丈夫。もっとも、ベンテイガのように車幅2m近い大型乗用車に日本国内で乗るなら、左端に注意が行き届く左ハンドル車特有の乗りやすさもけっこう捨て難かったりする。積極的に左を勧めるつもりはないが、このクラスになると左ハンドルに長く乗ってきた顧客も一定数いるはずなので、自由に選べるのは良いことだ。