
夕暮れの新大阪駅前。新幹線で東京から着いたばかりの我々を待っていたベンテイガは、他の送迎車やタクシーの群れのなかで頭ひとつ高く、遠くからでもすぐにわかった。黒いボディカラーのせいもあって、その立ち姿は(飛び切り豪華な)ロンドンタクシーのようにも、山高帽を被った紳士のようにも見えてくる。なぜ取材先が大阪なのかというと、それはベントレーの公式ブランドパートナーである「セント レジス ホテル」が国内では唯一、ここ大阪にあるからだ。今回は、市内中心部の御堂筋沿いにある同ホテルを拠点に試乗を行った。
まずはリアシートに案内され、現地スタッフの運転でホテルを目指す。クルマが動き出して初めて、エンジンがかかっていたことに気づくほどの静けさ。電気モーターだけで走れるハイブリッドカーやEVには慣れっこになっているはずなのに、そのどちらでもない6リッターW12搭載のベンテイガには、まるで周囲の喧騒までも呑み込んでしまいそうな異質の静寂がある。見上げれば、なだらかに弧を描く巨大なパノラマサンルーフが街の灯りを刻々と映し出していく。約1.35㎡もあるこのサンルーフをはじめ、すべてのウィンドウには遮音層を挟み込んだペアガラスが採用されているという。ボディ各部の遮音・吸音も含めた総合的なサウンドチューニングによって、この深々とした静けさは達成されているのだろう。