未来予想(2)Shoes
考察7 スーツに縛られずにファッション性を楽しめる靴の台頭
服装の変化に伴い、かつてスーツの相棒であった革靴市場も大きな変革期を迎えている。靴業界に精通する識者が市場の傾向を踏まえ、これからの靴のあり方と楽しみ方について考察する。
靴市場に精通する識者が考察
[左]伊勢丹新宿メンズ館 紳士靴バイヤー 鏡 陽介さん
バッグやテーラードクロージングのバイヤーを歴任したのち、2023年から紳士靴バイヤーを担当。靴と服どちらにも深い造詣を持つ。
[右]GMT代表 横瀬秀明さん
パラブーツ、トリッカーズの日本紹介に尽力。国内外の靴事情に精通し、国内のトレンドを熟知し。市場を牽引する靴業界の第一人者。
革靴はもっとパーソナルな価値観で選ばれる時代へ ── 鏡さん
FORME(フォルメ)
デザイナーの小島明洋氏が靴の木型やパターンまで設計を行う。定番であるブラッチャータイプに、ブラックのスエードをのせることでカジュアルな汎用性とエレガントな顔つきを融合させた一足。
LE YUCCA’S(レ ユッカス)
イタリア在住の女性デザイナー、村瀬由香氏によるシューズブランドでイタリアの老舗の工房で職人により製作。エレガントな丸みを帯びたトウにミニマムなデザインがモダンなムードを漂わせる。
JACQUES SOLOVIÈRE(ジャック ソロヴィエール)
2014年にパリで創業。アッパーのプリーツ風のデザインが個性的で、シンプルな装いにもさりげない存在感を添えてくれる。シボ革の柔らかい履き心地も軽快で、リラックスした着こなしによく馴染む。
スーツから離れて、自由な革靴選びへ
鏡 “自己表現としての一足”として革靴を選ぶ方が増えたというお話がありましたが、そのような傾向のひとつとして、デザイン性の高い革靴の人気が高まっていることも挙げられると思います。
横瀬 自分が好きな靴をどう取り入れるかという、まさに自己表現を楽しむにはもってこいの靴ですね。これらの靴を見てふと思い出したのは、かつて俳優のセルジュ・ゲンスブールはシンプルな装いに、足元だけ個性のある靴を合わせて、自分らしいスタイルを表現していたということ。今、あのような自由な靴の楽しみ方をする方が増えているのかもしれませんね。
鏡 最近は日本人の靴デザイナーにも注目が集まっています。履き心地や木型のクオリティは前提としつつ、履いたときにどんなスタイリングで見せたいか、を念頭に、シルエットやディテールを設計しているのが特徴ですね。
横瀬 そう考えると、靴の位置づけはこの数年でぐっと幅広くなったのではないでしょうか。TPOに合わせて利便性を重視する選び方もあれば、パーソナリティの表現としての選び方もある。
鏡 革靴はスーツから解放され、より自由な選び方ができるようになりました。選択肢が増えた分、革靴はこれからますますパーソナルな基準で選ばれていく。そうした傾向は今後さらに強まっていくのではないでしょうか。
横瀬 ええ、革靴の楽しみ方には新しい可能性がどんどん広がっていますね。
[MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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