未来予想(2)Shoes
考察3 スペック至上主義が変化
服装の変化に伴い、かつてスーツの相棒であった革靴市場も大きな変革期を迎えている。靴業界に精通する識者が市場の傾向を踏まえ、これからの靴のあり方と楽しみ方について考察する。
靴市場に精通する識者が考察
[左]伊勢丹新宿メンズ館 紳士靴バイヤー 鏡 陽介さん
バッグやテーラードクロージングのバイヤーを歴任したのち、2023年から紳士靴バイヤーを担当。靴と服どちらにも深い造詣を持つ。
[右]GMT代表 横瀬秀明さん
パラブーツ、トリッカーズの日本紹介に尽力。国内外の靴事情に精通し、国内のトレンドを熟知し。市場を牽引する靴業界の第一人者。
製法・革名・ラスト名のみを重視せず、合理的に靴を選ぶ方が増えた ── 鏡さん
SANTONI(サントーニ)
ストレートチップでも、グッドイヤー製法による王道の作りの一足(上)、履き慣らしの必要がないマッケイ製法(中央)、ラバーソールを搭載しスニーカー感覚で履けるセメント製法(右)のモデルを用意。履く人のライフスタイルによって最適な製法の一足が選べる。
製法にこだわらず、履き方で選ぶ価値観へ
横瀬 鏡さんは売り場に立たれていて、お客様の変化は感じますか?
鏡 お客様がより合理的に靴を選ぶようになったと、近年とても強く感じます。
横瀬 いわゆる“賢い買い方”をする方が増えた、ということでしょうか。
鏡 ひと昔前の靴を選ぶときの基準といえば、製法、革名、木型、などのスペックだったと思います。それが、今ではグッドイヤーだから良いということではなく、お客様がどのように履きたいかが価値基準になるのではないかと。
横瀬 確かに従来はスペック重視で靴を選ぶ方が多かったですね。
鏡 私たちもかつて雑誌などのメディアで商品を紹介するときは、製法名やラスト品番などの“名称”を前面に出して、価値を説明していましたから。
横瀬 男性は特にそのようなスペックに弱いですからね。エンジンや最高速度などの性能を謳うスーパーカーにロマンを感じるのと近いかもしれません(笑)。
鏡 今は自分の履き方に合わせて、靴を合理的に選ぶ時代ではないかと。例えばサントーニでは、キャップトウでも、グッドイヤー、マッケイ、セメントと3種類の製法で展開していますしね。
横瀬 最初から馴染みのよさを優先するなら、グッドイヤーではなくマッケイを選ぶ方もいるでしょうね。
鏡 購入する方が、靴に対して何を求めるかということが大事にされる時代に変わってきているのではないでしょうか。
[MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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