現在では確固たる地位を築き上げたエドワードグリーン。だが、そこに至るまでに波乱の歴史を経てきたことは、ファンの問では有名な話だ。
エドワード グリーンは1890年、靴の聖地ノーサンプトンにて創業した。創業当初から高品質な高級紳士靴の生産に特化し、生産数を1週間あたり約250足まで絞ってクオリティコントロールを行っていたという。1930年代、大戦期には軍需分野で力を伸ばし、英国空軍向けプーツの分野で最大規模を誇るまでになっていった。一方で、ウィンザー公やアーネスト・ヘミングウェイといった著名人たちにも愛用され、「伝説の靴」とまで謳われるようになっていく。



しかし、そんなグリーンも戦後は徐々に経営が悪化。1977年にはアメリカ資本への売却を余儀なくされてしまう。しかし、それでも経営難を打開するには至らず、倒産寸前にまで追い込まれた。ここがプランドのどん底の時代といわれている。
この窮地を救ったのが、イタリアで靴デザイナーをしていたジョン・フルスティック。グリーンが抱えた借金+1ポンドの金額でブランドを買収したというエビソードはつとに有名だ。1983年、社長に就任したフルスティックはブランドの再建に着手。典型的な英国クラシックのデザインであったそれまでのモデルを少しずつ現代的にモディファイしていった。

その集大成といえるものが、’98年に発表された808ラスト。細身のセミスクエアトウはビスポーク靴を現代的にアレンジしたもので、過去になかったスリムな顔つきで話題をさらった。2000年にフルスティックが死去した後はパートナーのヒラリー・フリーマンがその後を継ぎ、より自社ブランドの強化を推し進めていった。’80?’90年代にかけては他ブランドネームの靴作りも積極的に行っていたが、この前後から次第に自社ネームに集中していき、実力派ファクトリーから高級シューズブランドとしてのポジションを固めていったのである。
“本格靴”の価値基準はエドワード グリーンによって明確化された
エドワードグリーンの靴は、その卓越した作り込みから英国靴の規範として語られることも多い。スキンステッチやスベードソール、アンティークフイニッシュなど、今では高級仕立ての代名詞としてもてはやされるディテールも、エドワードグリーンによって有名になったものだ。”本格仕立て”の指標を打ち立てたグリーンは、紳士靴の価値暮準になったと言って差し支えない。そしてそのグリーンを支えるのは、苦難の時代を経ても変わらない品質へのこだわり。これこそ同社を”至高”と称する最大の理由なのである。
既製靴の最高峰を実現した「トップドロワー」ライン
先代社長ジョン・フルスティックが生み出したものとして忘れてはならないのが「トップドロワー」ライン。グリーンの中でも最高の贅を尽くしたこのラインは、現在パターンオーダーで注文を受け付けている。主な特徴としては、ヒールの積み上げをグラマラスな曲線状に仕上げたキューバンヒール(写真右上)、土踏まずをグイッと絞り込んだベヴェルドウエスト(右下)、ワインハイマー社製はじめ高級カーフの使用などがある。ビスポーク顔負けの仕上がりだ。価格は要問い合わせ。
