新時代に即した靴・鞄選びの新基準を確立する50のヒントを厳選。ここから、あなたに最適なスタイルを完成させる糸口を見出してほしい。
二大百貨店バイヤーに聞く
“シーンで選び、ロマンで愛す” 鞄選びの新基準
オンかオフか、かつての鞄選びはシンプルだった。だが装いの自由度が増した今、その境界は曖昧に。仕事でもラフな日、休日でもきちんとしたい日がある。そんな時代にふさわしい大人の鞄選びとは? 都内の二大百貨店バイヤーに伺った。

西本幸二さん(左)
阪急メンズ東京 紳士洋品雑貨販売部 バッグ・革小物・紳飾・シーズン雑貨 バイヤー
福島成博さん(右)
伊勢丹新宿店 メンズ館 紳士靴・バッグ&ラゲッジ バイヤー
オンオフの二軸が薄れ、シーンとロマンで鞄を選ぶ
福島 以前は、仕事用、休日用で鞄を分ける方が多かったと思います。ですが今は、商談、会食、人と会わない内勤日というように“シーン”で選ぶ方が増えているのではないでしょうか?
西本 二軸では語れなくなっていますね。
福島 オンの中にもラフな日があり、オフの中にもきちんとしたい場面がある。場に応じてドレス度がグラデーションしているからこそ、鞄もそれに合わせて選ぶ感覚になっているように感じます。
西本 だからこそ、どんな鞄を持てばいいか悩む方も多い。阪急メンズ東京でも、“仕事でも休日でも使える鞄はありますか”という声は多いですね。中でもトートバッグは守備範囲が広く、特に人気があります。PCや荷物を入れやすく、セットアップにもカジュアルにも好相性で、今の生活で使いやすい形です。
【hint 28】
装いがラフになった分、鞄は品格を担保する調整役に ── 福島さん
福島 ただ、単に何にでも使えるだけではなく、鞄が“品格を担保する”役割も担うようになっていると思います。スーツを着る機会が減ると、以前なら服が担っていたきちんと感を、靴や鞄で補う必要が出てくる。だからレザーのトートのように、ラフな服装にも品の良さを演出できる鞄が選ばれているのだと思います。
西本 確かにトートの中でも、上品に見えるレザーは強いですね。便利さだけなら機能素材もありますが、大人の装いには、革ならではの落ち着きや表情を求める方が多い印象です。
福島 もう一つ、売り場で感じるのが、鞄の使い分けがかなり細分化していることです。日常ではメゾンブランドのバッグで洒落感を楽しむ一方、商談や会食ではロゴが目立たない上質なファクトリーブランドの鞄を選ぶ方もいる。良い悪いではなく、その場の空気に合う役割で選ばれているのだと思います。
【hint 29】
スペックよりむしろ情緒的価値で鞄を選ぶ時代に ── 西本さん
西本 そうした“場に合わせて選ぶ”感覚は、私の方でも強く感じています。以前はブランド名やポケット数、軽さといったスペックで選ぶ方も多かったのですが、今は“自分らしく持てるか” “長く使いたいと思えるか”という情緒的な価値にも目が向いていらっしゃるようです。
福島 スペックだけではなく、持ったときの満足感も大事になっている。
西本 そうですね。レザーのエイジングも、その魅力のひとつです。今回選んだファイブウッズも、そうした価値を感じられる鞄。日本の老舗ブランドらしく、素材や構造、使い心地を丁寧に考えている。流行に左右されにくく、使うほどに革の味が増すので、仕事の道具として使いながら、革を育てる満足感もあります。
使うほど深まる、ロマンティックな表情
1890年創業の林五が手掛ける、使うほどに表情を深めるトートバッグ。素材や構造、使い心地を丁寧に突き詰めたシンプルな形は、流行に左右されにくく、装いの幅も広い。日々の仕事を受け止めながら、革を育てる満足感も味わえる。縦28×横37(上部46)×マチ11cm。19万8000円(阪急メンズ東京)
福島 私が選んだアカーテは、日本企画、イタリア生産という点が今らしいと思いました。日本のユーザーに合うサイズ感や使いやすさがありながら、イタリアらしい美意識もある。マスミエッセンシャルは、豊岡の職人仕事やアーカイブの箱型バッグの意匠を現代のトートに落とし込んでいる。どちらも、ものづくりのこだわりが満足感につながる鞄ですね。
日本の実用とイタリアの美意識が融合
日本企画、イタリア生産ならではの美意識と実用性が魅力。ブランドを象徴する「OSTRO」を小ぶりにして仕事のカジュアルな装いから休日のドレッシーな外出まで上品に持てる。ほどよい華やぎと軽快さがあり、パートナーとシェア使いができるのも今らしい。縦28×横38×マチ16cm。19万8000円(伊勢丹新宿店)
箱型バッグの記憶を宿す現代トート
マスミ鞄嚢が過去に手掛けた箱型バッグの金具に着想を得た、ハンドル付け根の意匠が目を引く。現代的なトートの使いやすさに、豊岡に根ざす職人仕事を重ね、アーカイブ由来の造形がシンプルな姿に確かな個性を宿す。縦35×横41×マチ14cm。18万1500円(マスミ鞄嚢)
西本 ジ・ウォームスクラフツマニュファクチャーも、エイジングのロマンとものづくりのストーリー性が味わえます。近年はキャッシュレス化で荷物が少なくなり、今の生活に合うミニバッグの人気が高まっています。
ホースハイドの艶を旬のミニバッグで
国内で一貫生産される新喜皮革のホースハイドを外装に採用。極上の艶感やエイジングを味わえる素材を、職人が丁寧に仕立てたミニバッグだ。キャッシュレス化で手荷物が少なくなった現代の暮らしに合い、パートナーと共有しやすいサイズ感も魅力。縦23×横27×マチ8cm。14万8500円(阪急メンズ東京)
福島 パートナーと共有しやすいサイズ感というのも、今らしいですよね。
西本 そう思います。性別やオンオフの境界線が薄れる中で、小ぶりな上質バッグをシェアして使う方は増えています。
福島 鞄は物を運ぶ道具ですから、自分の日々の使うシーンに合うことが前提。その上で素材や作り、背景に共感できるものなら、持つたびに気分も上がる。
西本 シーンで選び、ロマンで愛せるかが、現代の鞄選びの鍵ですね。
[MEN’S EX Summer 2026の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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