時計のプロがたちが振り返る今年のWatches & Wonders

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「Watches & Wonders 2024」から識者が注目作を徹底討論
今、所有すべき新作腕時計の真実

2024年4月、スイス・ジュネーブで開催された世界最大の高級時計の見本市「Watches & Wonders Geneva」。そこで発表された最新モデルを中心に、時計の賢者たちが今買うべき1本を徹底討論。

Watches & Wonders 2024
Watches & Wonders 2024 様子

今年のWatches & Wonders 2024を振り返って

4月9日から始まったウォッチズ&ワンダーズでお披露目になった新作
4月9日から始まったウォッチズ&ワンダーズでお披露目になった新作の数々が早くも座談会の場に集結。話題の最新作から希少な限定モデルまで実際に見て触りながら座談会がスタート。

今年はしっかりと売りやすい現実的な新作に注目

市塚 上野さんは、ウォッチズ&ワンダーズに行かれたと思いますが、今年の新作は、どのように分析していますか?

上野 世界初、みたいな誰もが驚く新作は少なかったような気がします。自分たちがやっていないところに広げるというよりは、確実に勝てる時計を投入してきたのではないでしょうか。そういう意味では、扱いやすい時計が多かったですね。

市塚 岡村さんは、どう?

岡村 上野さんに同感。各メゾンが自分たちの得意なところを強化していると思いました。やっぱりアイコンを持っているところは、強いですね。

市塚 アイコンは財産。一朝一夕には、作れませんからね。アイコンからの流れで、復刻系のモデルも多かったような。

岡村 そっくり忠実に復刻するパターンと、アレンジするパターンがありますね。

市塚 復刻モデルで言うと、これまでは1950年代〜’70年代モデルの復刻が中心でしたが、最近だと’90年代のモデルを復刻した時計も目立ちます。

岡村 ’90年代って、ついこの間かと思っていたけど、実はもう30年経っているから、いよいよヴィンテージ。機械式時計の暗黒時代である’80年代を過ぎて、復活前夜の’90年代には、面白い時計が多いですからね。


ゴールドウォッチをもっと積極的に選ぶ時代に!?

上野 ロイヤル オークの人気を受けてか、そのデザインを手がけたジェラルド・ジェンタのかつての仕事ぶりにも、再び注目が集まっています。

市塚 実は、いろんなブランドの時計を手がけていますからね。ジェンタ・ブームは、しばらく続きそうな気配。

岡村 ロイヤル オークはともすれば他社のゴールドより高いステンレススチールモデルで有名になったけれど、最近のオーデマ ピゲさんは、逆にゴールドの使い方が上手ですよね。躊躇うことなくブレスレットまでフルゴールドにしたり、新しいゴールド素材を発表したり。

上野 ウチのお店でも、ゴールドウォッチが売れています。資産価値の高さに注目して選んでいる方も多いですが、純粋に自分らしさをアピールするためにゴールドウォッチを選ばれる方が多いですね。

市塚 これだけSSモデルが高騰すると、「もうちょっと頑張ればゴールド」って考えるのも、当然といえば当然。時計ファンなら「いつかはゴールド」って、誰もが夢を見ていますから。

岡村 ゴールドウォッチの場合、組み合わせるダイヤルカラーが、大事ですよね。それで品格も決まってしまうような気がします。

市塚 今年は、各社から絶妙なカラーリングの新作が登場していますから「いつかはゴールド」じゃなく「いますぐゴールド」にチャレンジしてほしいですね。

上野 ダイヤルの品格という点で言えば、グランドセイコーの繊細なダイヤルは、一歩抜きんでている感がありませんか。

岡村 日本の四季を取り入れたダイヤル、お見事ですよね。

市塚 ウォッチズ&ワンダーズのブースも、いつも人だかりができていました。海外勢からの注目度は、かなり上がっているようです。新作の横にラインが走る「白樺ダイヤル」は、世界中で売れそう。

上野 ウォッチズ&ワンダーズの会場で、唯一のニッポンブランドですからね。一等地にドーンとブースを構えていて、同じ日本人として誇らしいというか。

岡村 なんだ、結局みんなGSが大好きってことなのね。


上野翔太さん 伊勢丹新宿店 時計バイヤー
上野翔太さん
2008年伊勢丹入社。入社時は婦人服を担当し、2009年より宝飾時計領域を担当。ブランドや技術の発掘を精力的に行っており、国内外の見本市やブランドの工場・工房を多く訪問。


岡村佳代さん 時計ジャーナリスト
岡村佳代さん
学生時代から執筆活動を開始。女性向けの本格時計のムック製作をきっかけに機械式時計の魅力に開眼。世界での取材経験は業界屈指。メンズ時計を語れる稀有な存在としても活躍中。


市塚忠義さん 『時計Begin』編集
市塚忠義さん
雑誌『Begin』からスピンオフした時計専門誌『時計Begin』の編集に創刊時から携わる初期メンバー。スイスやドイツを代表する老舗ブランドの工房ファクトリー訪問は、ほぼ全制覇したとか。




[MEN’S EX Summer 2024の記事を再構成]
※表示価格は税込み。

2024

VOL.342

Summer

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