ハンドリングを重視したスポーティな仕立て

グレード展開は、ハイブリッドの「SPORT Z」とプラグインハイブリッドの「SPORT RS」の2種類。今回の試乗車は前者の「SPORT Z」だった。

インテリアはシンプルなデザインで、試乗車にあるサンドブラウンの内装色を選ぶと運転席と助手席がアシンメトリーな配色となる。後席スペースもホイールベースを短くしたわりには圧迫感もなく、約180cmの大人が快適にすごせる空間が確保されている。

パワートレインは、クロスオーバーとも同じ、最高出力186ps、最大トルク221Nmを発揮する2.5リッター直4エンジンをベースとしたハイブリッドで、システム最高出力は234ps。トランスミッションは電気式無段変速機で、駆動方式は4WD。燃費は21.3km/L(WLTCモード)となっている。
走り出すとクロスオーバーとは異なる性格づけがなされていることがわかる。ショートホイールベースかつワイドトレッドで、明らかにハンドリングを重視したセッティングだ。またDRS(後輪操舵)を標準装備しており、低速域では逆相、中高速では同相になるよう制御されており、回頭性と安定性を高めている。サスペンション形式はフロントマクファーソンストラット、リヤはマルチリンクタイプで、足元には21インチのミシュラン製eプライマシーを装着していた。名は体を表すではないが、クラウンシリーズにおいて“スポーツ”を冠した狙いが伝わってくる。
トヨタのハイブリッドシステム(THSⅡ)の出来のよさはいまさら言うまでもなく、燃費もこのボディで20km/Lを超えるのだから、文句のつけようがない。一方でハンドリングがいいだけに、もう少しパワーが欲しくなったのも事実だ。まだ未試乗だがPHEVモデルはシステム最高出力306psで、可変ダンパーなども備わるというから、より“スポーツ”を求めるならそちらをということだろう。ちなみに車両価格はハイブリッドの「SPORT Z」が590万円、PHEVの「SPORT RS」が 765万円。
よくよく考えてみれば、セダンをベースにSUVやワゴンやクーペといった派生モデルを展開するのはメルセデス・ベンツやBMWをはじめ欧州車の常套手段。そういう意味でも欧州車と肩を並べる日本車がようやく登場したと言えるかもしれない。
文=藤野太一 写真=茂呂幸正、トヨタ 編集=iconic