ラゲージの存在を忘れるハンドリング
はやりのスレートグレーにペイントされた取材車両。M3コンペティションM xDrive ツーリング、と正式名はやや長い。見た目になかなかの迫力だ。特にBMWのアイコンであるキドニーグリルは4シリーズ系に採用される大型タイプ。このグリルを装備する3シリーズはM3だけ。4WDながら前後違うサイズの薄くて幅広いタイヤにも目を見張る。
どすんと腰を下ろした。スポーツタイプのバケットシート。着座位置はかなり低いのだ。腰痛持ちには辛い。SUVが好まれる理由の一つが分かるというもの。
Mが専用設計した“伝家の宝刀” =S型エンジンの3リッターストレート6ターボを目覚めさせた。スティックタイプのギアレバーと、ハンドルにスタンダードモデルにはない赤いスイッチがあることがMを感じさせるくらいで、全体的な雰囲気は見慣れた3シリーズ。特に緊張することもなく座っていられたのだが、目覚めたエンジン音の獰猛さにはさすがに「おお!」と声が出た。
走り出して、まずはボディのがっしり感に驚く。いや、すでにM3には試乗ずみだから、ある程度予想はついたけれど、ワゴンボディということで少しは“緩んでいる”と想像していたのだ。もちろん、厳密には緩んでいるはず。でもその実感がない。がっちりしている。だから運転していても後ろに空気を運んでいるという感じがまるでない。そこがフツウのステーションワゴンとは違う。
極太のハンドルと相まって、街中では前輪の大きさを常に意識してしまう。速度が上がっていくにつれて、その意識が薄れるのもセダンと同じ。そのうちツーリングであることさえ忘れてしまう。
高速道路の速度域になると、なんとM3であるという意識さえ遠のいたように思えた。セダンよりも乗り心地がいいと知ったからだ。当然ながら、空荷と積載時でコンディションの大きく変わるワゴンモデルには専用チューニングのアシが奢られている。それが功を奏したか。とにかく街中でのハードコアな表情は一変して慈悲深くなり、長距離ドライブもまるで苦にならない。
M3であることをがぜん思い出すのはやはりカントリーロードやワインディングロードで、だ。前輪はドライビングを楽しむ邪魔にならぬよう程よく解放され、後輪中心の駆動でダイナミックな走りを楽しむことができる。スポーツモードでのサウンドはたけだけしく、エンジンフィールは極めてスムースで、しかも高回転域までストレスなく回るから、操っていて楽しい。もちろん、ここでもまた後ろに大きなスペースのあることを忘れてしまっていた。
BMW M3 ツーリングのディテールをチェック(画像6枚)
M3ツーリングの正しい使い方はなんだろう。日常のアシならば、ちょっと長めのドライブが毎日で、しかもそのどこかに楽しい道やコースがあるような生活……。街と田舎を結ぶ仕事を楽しんでいるような人、となるだろうか。
文=西川淳 写真=デレック槇島、ビー・エム・ダブリュー 編集=iconic












