“使える道具”として多くの人たちに受け入れられた


まずはアルファード。土台のしっかり感がまずは嬉しい。背が高く細長いクルマなのでどうしても動的な姿勢に不安が生じがち。けれども街中はもちろん高速道路のコーナーでも非常に安定しており、気持ちよく駆け抜ける。エンジン音と高速走行時のハンドル微振動をもう少し抑えてほしいところだけれど、旧型より大きく改善されたことは間違いない。各種の走行アシスト機能も最新モデルだけに上手に働いてくれた。
劇的に良くなったのは乗り心地だ。特に2列目はようやく寛げるレベルにようやくたどり着いた。ショーファーカーとしても不満なく使えそうだ。


今回のモデルチェンジで兄弟車のヴェルファイアにはちょっと違った個性、よりドライバーズカー的なキャラクターを与えている。中身の同じクルマを作る意味などないと、トヨタもやっと気づいたというわけだ。どの系列店でも同じクルマが買えるようになったこともそうなった要因の一つだろう。
とにかくヴェルファイアはタイヤインチも大きく、フロントにはブレースまで入ってかっちり仕立てられている。前足のしっかり感はアルファードよりはっきりと上。自由に動く感じも強い。時おりフロントの存在感が勝ちすぎる嫌いもあるけれど、気持ちのいいハンドリングという点は、これまでのミニバンにはなかった個性だろう。
速度が上がるにつれて前後輪ともにこれまでにない粘り腰を発揮し、ドライバーズカーとしての存在感がいっそう増す。高速走行中にやや神経質な動きを見せ、タイヤのパターンノイズが気になることもあったが、日本の速度領域であれば我慢のできるレベルだった。
19インチという見栄えのいいタイヤ&ホイールを履くにもかかわらず、乗り心地は全般的にさほど悪化していない点も特筆できる。
アルファードのディテールをチェック(画像6枚)
試乗中、30秒に1台くらいの頻度で歴代アルファード&ヴェルファイアとすれ違った。こちらが新型だと気づいたオーナーはわずか。これだけの人気モデルなのになぜ? 要するにアルファードは“使える道具”として多くの人たちに受け入れられているということだろう。つまり、モデルチェンジやモデルライフにかかわらず売れるし買っていいクルマである。
昔はマイナーチェンジやフルモデルチェンジのタイミングを考えて新車を買う必要があった。現代の人気モデル、アルファードはまるで違う。良い道具は必要な人が必要な時に買えばいいのだ。それがそう簡単にできないという現状が、人気を保つ理由になっているのだから皮肉である。
文・西川淳 写真・ジュネコ 編集・iconic