傑作時計の肖像
本格時計の常識を変えた美しき革命者の顔。
CHANEL[J12 cal.12.1]
ブラックのセットアップスーツに同色のタートルネックニット。至極シンプルにまとめた装いに、「J12」の艶めきが華を添える。高級ホテルでのディナーなど、エレガントな場で抜群に映えそうだ。時計は下写真と同じ。
シャネルJ12 キャリバー 12.1
自動巻き。径38mm。高耐性セラミック×18KYGケース。高耐性セラミックブレスレット。200m防水。各231万円(シャネル カスタマーケア) ※9月29日発売
職人技の粋を集めた至高のアイコンウォッチ
既成概念を打ち破る画期的なデザインによって、ファッションの歴史に金字塔を打ち立てたブランドは枚挙にいとまがない。しかし、それを単なるブームやトレンドに終わらせず、不朽の「スタイル」にまで進化させることができた者はごくわずかだ。いうなれば、真の革命者。その代表格に挙げられるのがシャネルであろう。
リトル ブラック ドレス。チェーンを通したハンドバッグ。表情豊かなツイードスーツ。シャネルが打ち出した斬新なアイテムの数々は、今なおブランドに欠かせない代名詞である。これらは旧習へのアンチテーゼとして語られることも多いが、シャネルが成したのは単なる時代への反逆ではなく、移ろうトレンドに流されない本質的価値の創造だったのだ。
21世紀の幕開けとともに産声を上げた「J12」もまた、型破りにして普遍の輝きを宿す、シャネルのスタイルアイコンである。回転式ベゼルやリューズガード、視認性に優れたダイヤルなどダイバーズウォッチのエッセンスを随所に宿しながら、過去のどんな時計とも違う圧倒的な異彩を放ち世を驚かせた。その要因となったのが、機械式時計としては異例といえるセラミックケース&ブレスレットの採用だ。芸術的なまでに滑らかな質感と、美しい艶。この斬新な素材使いは、「J12」をJ12たらしめるDNAとなった。その加工はステンレス・スティールや金にも増して困難だったが、シャネルは見事にそれを形にしてみせたのだ。
’19年、シャネルは「J12」のフルリニューアルに踏み切る。が、そのコンセプトが実に斬新だった。掲げたスローガンは、「何も変えずにすべてを変える」。まるで禅の公案のようだが、シャネルの答えは実に鮮やかだった。まず、時計の心臓であるムーブメントを一新。自社が資本参加するケニッシ社とともに開発した「キャリバー 12.1」を搭載し、本格機械式時計としての本質をさらに追求したのだ。加えてベゼルの刻みやインデックスの書体、リューズの幅など、7割以上ものディテールを微細にアップデート。一見大きく変わらないようで、中身も見た目もさらに研ぎ澄まされた「J12」が完成したのである。
そして今年はキャリバー 12.1採用モデルとして初めて、18Kイエローゴールドを組み合わせたコンビモデルが登場。高耐性セラミックの艶めきとゴールドの輝きが一体となった、実に華麗な新作が誕生した。
男が追求すべきは、ファッションではなくスタイルだとしばしばいわれる。とあれば、「J12」はまさしく男の美学に適うマスターピースといえるだろう。機械式時計に新たなスタイルを生み出した革命者。その顔は、ただただ美しい。
[MEN’S EX Autumn 2023の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
※表示価格は税込み。