傑作時計の肖像
「前人未到」を成した凛々しき挑戦者の顔。
GRAND SEIKO[SLGC001]
エボリューション9 コレクション
テンタグラフ SLGC001
自動巻き。径43.2mm。ブライトチタンケース&ブレスレット。10気圧防水。181万5000円(セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー))
初の機械式クロノグラフで叶えた、“世界最長パワーリザーブ”の革新。
困難が大きいほど、それを克服したときの栄光も大きくなる──エピクロスの言葉に依れば、「テンタグラフ」の完成によってグランドセイコーは輝かしい誉れを得たといえるだろう。ブランド史上初めて実現した、機械式自動巻きクロノグラフである。“TEN”beat、“T”hree days、“A”utomatic、Chrono“GRAPH”。新開発キャリバー「9SC5」が備える4つの特色から与えられたのが「テンタグラフ」の名だ。毎秒10振動(3万6000振動/時)というハイビートは高い精度の実現に繋がる一方、エネルギーの消費が大きくパワーリザーブが短くなってしまう。これが今までの常識だった。しかしテンタグラフは、約72時間(3日間)というロングパワーリザーブを実現。これは10振動の機械式クロノグラフとして世界最長記録である。この“常識破り”な性能の礎になったのは、2020年に発表した自動巻きムーブメント、キャリバー「9SA5」だった。毎秒10振動・最大巻上時約80時間というスペックを備えるこの名機をベースにすることで、クロノグラフにとって極めて重要な高精度を発揮しつつ破格のロングパワーリザーブも両立。いわば同社が長年続けてきた、弛まぬ研鑽の結晶がテンタグラフなのだ。
あくなき挑戦の果てに生まれた、革新的な機械式クロノグラフ。その顔つきは実に精悍だ。ケースは、SSよりも約30%軽量ながらキズや腐食に強いブライトチタン。逞しい印象を高める幅広のラグや、ベゼルの上面をフラットにしてエッジを立たせた意匠、張りのある面で構成することで輝きを際立たせた造形など、すみずみまで研ぎすまされたデザインが目を惹く。「エボリューション9スタイル」(こちらの記事参照)の文法にクロノグラフらしいスポーティさが加わったその表情は、凛然としたオーラに満ちあふれている。
そこに瑞々しい美しさを添えているのが、極めて繊細な型打ちが施されたネイビーの文字盤。ブランドが擁する機械式時計工房「グランドセイコースタジオ 雫石」から見える雄大な山肌を表現した「岩手山パターン」は、世界に誇る日本の美意識と、それをいかんなく表現するクラフツマンシップを象徴している。まさに圧巻の仕上がりだ。
山といえば、ネルソン・マンデラが残したこんな言葉がある。「大きな山を登った後にだけ、人はさらに登るべきたくさんの山があることを見出す」
初の機械式クロノグラフというひとつの山を踏破し、それでも挑戦への情熱を燃やし続けるグランドセイコーは、次にどんな山を見ているのだろうか。
お問い合わせ先
セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) TEL 0120-302-617
[MEN’S EX Summer 2023の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
※表示価格は税込み。