オフロード走破性の技術が日常の走りを快適に


ミニバンスタイルながらクロスオーバーモデルとしての実力が魅力のデリカD:5は、基本設計は2007年にまで遡り、フルモデルチェンジ並みの大改良が行われたものの、三菱の最新技術を搭載できずにいる面も。駆動方式は、基本をフロント駆動としながら、必要に応じてリアへのトルク配分をコントロールする電子制御4WDで、モードとしては、2WD、4WDオート、そして、4WDロックの3つを備え、ドライバーが自在に選ぶことが可能だ。ちなみに、車両運動統合制御システムは、AYC(ハンドリングのためのブレーキ制御)がないためAWCに止まっている。そういった制御はもちろんだが、ミニバンながらオフロードを走れるようにと、最低地上高や対地障害角といったグランドクリアランスを確保していることも三菱のこだわりのひとつ。今回のコースは走っているうちにだんだんと荒れてきたこともあって、時折、ズリズリとフロアやバンパーを擦ることもあったが、たとえ、タイヤが浮いてしまうようなシーンでも、トラクションコントロールが作動して空転輪にブレーキをかけつつ接地輪へとトルクを回し、やはり難なく脱出。ヒルクライムについては、パワフルなディーゼルエンジンを搭載していることもあって、これだけ大きなボディながらもクリアしてしまうパフォーマンスを見せた。ただし、ヒルダウンについては制御が付いていないため、今回は見送りとなってしまったのだが……。


デビューしたばかりの軽乗用車デリカミニは、実は、ゼロから作ったのではなくeK クロス スペースをベースに、前後バンパーデザインを専用とし、さらに、4WDグレードには大径タイヤと専用となるショックアブソーバー制御を備えたモデルだ。頼もしく見えるフロントマスクから高い走破性をついつい期待してしまうが、最低地上高とてベースモデルより5mm高いだけ。しかし、そこには三菱こだわりの走破性制御をプラスしており、特に脱出アプローチはマッドやスノードライブで期待できるほどのレベルとなっており、先の2台と同じようにタイヤが空転した場合でも、クリアランスさえ確保されていれば、アクセルを踏み続けていると脱出してしまう。ちなみに、その基本フィーリングは3台とも同じだが、より安心していられるのはやはりアウトランダーPHEVがいちばん、続いてデリカD:5、そしてデリカミニの順となっている。
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ヒルクライムについては、ターボエンジンながらも登坂に必要なパワーが不足していること、当日はぬかるみが広がっていたこともあって、アタックを許されなかったが、ヒルダウンはデリカミニでも体験することができた。もちろん、速度上限は定められているがアクセル操作だけでスピードを調整できることも手伝って、高い安心感があることを改めて確認できた。また専用ショックアブソーバーの採用により、不整地での路面からの大きな入力を上手く整えてくれていること、そして、何よりもこのキャンバー走行を可能とした低重心など、デザインだけではない三菱のオフロード性能へのこだわりを感じたところでもある。
オフロード走破性や楽しさを導き出してくれるハンドリングにおいては3モデルで違いはあるものの、他ブランドのような走れそうな雰囲気だけを作り上げているモデルたちとは一線を画していることがよく分かった。そして、このどこでも走れるというSUVの本質(たとえばデリカミニの専用ショックアブソーバー)は、高速道路走行ではフラットライド感を作り上げている。まさに快適性まで手に入れていて、一石二鳥的なパフォーマンスを作り上げていた。オフロード走破性を求めたことで、日常において安心感を覚えさせてくれる、それもまた三菱のモデルのアドバンテージとなっている。
文・吉田直志 写真・三菱自動車 編集・iconic