ナポリメイドのシャツは、何故「待ってでも欲しいオーラ」があるのか?

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リングヂャケットのディレクター奥野剛史が
イタリアのモノ作りを自らの言葉で語る

奥野剛史のナポリ手記バナー

[Shirt(シャツ)]編

南イタリアの太陽と風を纏っているかのようなシャツ
4万2900円/リングヂャケット ナポリ(リングヂャケットマイスター206 青山店)

「仕様は間違えるし、納期は守らない……けれど、待ってでも欲しいオーラがある」

実は、ナポリでシャツを作る前に日本でも色々とシャツを作っていた。もちろん、日本ならではの端正でカッチリとしたシャツも悪くはなかったのだが、ウチの柔らかく身体を包み込む丸みのあるジャケットには、フワッと柔らかい着心地のシャツが必須だった。

そこで、国内で何度か試作してみたが、どうにも納得のいく雰囲気に仕上がらなかった。ハンドも何だか整然と綺麗すぎるし、工賃も想定より割高になってしまった。実は、日本ではハンドのインフラが整っておらず、シャツ工場の中で完結せずに、ハンド工程だけ別途修理専門の工場に外注したりする必要があったのだ。さらに、これは意外と同業者でも知らない人が多いが、ナポリであってもシャツにおける手マツリの箇所は、それ専門の職人が自宅に持ち帰って仕上げることが多いのだ。日本でも昭和時代には多くあった、お母さんが家に帰ってきてからチクチクと夜なべして内職の針仕事をするアレである。

自宅にシャツを持って帰って、針仕事をするマンマ
自宅にシャツを持って帰って、針仕事をするマンマ。この日も陽気に笑いながら縫っていた。

ナポリでは未だに内職文化が色濃く残っており、ベースの組み立ては工場でやり、手マツリ部分はお母さんたちが自宅に持ち帰って内職するのだ。陽気でマイペースなナポレターナの性格がそうさせるのか? ステッチの入り方もまた陽気に踊っている。端正な日本のステッチとはまた違い、非常に味わいがあって趣深い。また、袖山のフワッと広がるギャザーも抜群の雰囲気。左右分量が違うのは当たり前で、“未完成の美”がそこにある。

全く同じ雰囲気に作る方が実は簡単で、こういった絶妙なニュアンスを入れるのは、こちらが指示してできるものではない。その土地の気候や工房の空気、そして職人の人間性が、そこに宿るのだ。ただ、ジャケットの下に着るための衣類というだけではなく、職人の想い、そして南イタリアの太陽と風を纏っているかのようなシャツ。それこそが、ナポリのハンドメイドシャツなのだ。

長年勤める熟練の職人たち
シャツのパーツ製作や全体を組み立てる工程は工場で行う。分業制でパーツ毎に担当が分かれており、それぞれが長年勤める熟練の職人たちだ。

当初、日本製にこだわっていたシャツ作りだが、本当に自分たちが作りたい物ができる所は何処なのか? 大事なのは生産国ではなく、適切な産地を選ぶことだと気付いてからは、ナポリメイドのシャツにぐっと注力していった。もちろん、雰囲気だけではない。襟のステッチ幅、運針の細かさ、芯地、袖振りの角度……、企業秘密になってしまうようなマニアックな打ち合わせも数多くこなしてきている。

試作品をチェックしていると、ああだこうだと熱い議論がはじまる。1時間の打合せ予定が、気付けば4時間経っていた、なんてこともしばしば。陽気でマイペースだが、その一方で、情熱には情熱で応えてくれる、熱い職人魂をもったナポレターナだからこそ、至高のシャツができあがるのだ。

シンプルなラインは、抜群に美しいシルエットを描く

背ダーツも入らないシンプルなラインは、抜群に美しいシルエットを描く。ギャザーやイセの量、運針、ステッチ幅、剣ボロなど、9工程をハンドで仕上げることで、柔らかな雰囲気に。生地はツイルで、時代に左右されないレギュラーカラーが定番だ。


奥野剛史さん

Profile
奥野剛史
リングヂャケット ディレクター

「職人技・他にない・唯一」と聞くと居ても立っても居られない偏愛型洋服屋。ナポリの職人技が大好物。



[MEN’S EX Spring 2023の記事を再構成]
※表示価格は税込み。

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