キャビン周りはエアカプセルのような環境に
路面が急速に乾き始めている。とはいえ慎重なドライブを続けた。時速40kmを超えたあたりでエルバの注目装備というべきAAMSが作動する。ノーズの中ほどから視界を遮らない程度の壁が迫り上がるのだ。すると空気の流れが変わって、エアカプセルのような環境がキャビンの周りで形成される。完全に風を感じなくなるというと嘘になるが、向かい風の勢いは確かに弱まったし、身の回りの雑多な音のボリュームも一段下がったように感じた。レーシングカーコンストラクターとして世界にその名を馳せるマクラーレンだけあって、空気の流れを操ることなど朝飯前。ちなみにAAMSとはアクティブ・エア・マネジメント・システムの略。ルーフ&ウィンドウレスのこのクルマに少しは快適なドライブを提供するアイテムというわけだった。
半時間もたたないうちにドライ路面が戻ってきた。815psの片鱗を味わってみるとしよう。今日は貸し切り、少しくらい速度が出てもおとがめなしだ。右足を思い切って踏み込んでみた。
飛び出した瞬間こそ後輪が路面を蹴る力を意識することもできたが、そこから先はもう異次元。腰に巻いたベルトごと前から目に見えない強烈な力で引っ張られたかのように加速する。それでいてマシンはというと路面に張り付いて安定しており、怖さは微塵も感じない。顔が丸出しゆえ、空気をキレイに裂いて加速するという感覚もまた分かりやすい。そして、これが何よりも重要なポイントだが、ブレーキ性能はもはやロードカーレベルを遥かに超えて強力、かつ正確な制動フィールだった。
ドライバー、つまり私は笑い続けている。ところどころ日陰の路面が濡れていたとしてもコントロールできる妙な自信があった。ある速度域に達すれば、空気が悲鳴をあげたようにカーンという音が炸裂した。あれはエアカプセルの弾ける音だったのかもしれない。
文=西川 淳 写真=マクラーレン・オートモーティブ 編集=iconic






