加藤綾子さん連載・最終回「苦境の時に責任を取れる人とは」ブリヂストン 石橋秀一さん

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【加藤綾子 一流思考のヒント】
第34回・最終回 ブリヂストン 取締役代表執行役 Global CEO 石橋秀一さん[後編]

>>>[前編]はこちら

【加藤綾子 一流思考のヒント】第34回 ブリヂストン 取締役代表執行役 Global CEO 石橋秀一さん 後編
加藤さん衣装:ドレス7万4800円/コルコバード(フィルム) イヤリング40万7000円、リング12万1000円/以上イレアナ・マクリ(イレアナ・マクリ 伊勢丹新宿店) 靴〈スタイリスト私物〉

加藤綾子 Ayako Kato
1985年埼玉生まれ。2008年フジテレビ入社、看板アナウンサーとして活躍。’16年、フリーアナウンサーとなり女優としても活動。現在は報道番組『Live News イット!』(CX)のメインキャスターを務めるほか、『ホンマでっか!? TV』(CX)にレギュラー出演中。
著書に『会話は、とぎれていい―愛される48のヒント』(文響社刊)など。

石橋秀一 Shuichi Ishibashi
1954年福岡生まれ。’77年静岡大学人文学部卒業後、ブリヂストンに入社。広島での営業、本社の経営企画を経て、’89年に経営再建中の米ファイアストンへ。2003年に帰国し、’05年に執行役員、’16年に副社長、’19年に代表執行役副会長。’20年3月より現職。創業者の石橋正二郎とは同姓だが姻戚関係はない。

「責任を取ろうと覚悟できる人は逃げるわけにはいかないという理由と使命感がある」(石橋さん)

石橋 ちなみに2000年に1回目以上の修羅場ともいえるファイアストン・タイヤのリコール問題に直面して、何が問題かわからない中で製品を自主回収するとなって、結局2000億円以上の損失を計上したんですが、’91年にくぐり抜けた1回目の修羅場がいい経験になりました。2020年もCOVID-19で厳しいものがありましたけど、「これで会社が潰れるようなことはないし、キャッシュがあればなんとかなる」と思うことができましたね。

加藤 2回目の修羅場で学ばれたのはどんなことでしたか?

石橋 僕はヴァイスプレジデントになっていたんですが、ファイアストンがアメリカのあらゆるメディアに叩かれて、会社の存続が危ういところまで追い込まれました。ただ、そうなると逃げる人もいっぱい出てくるんですよね(苦笑)。

加藤 責任から逃げるんですね?

石橋 辞める、会社に出てこない、鈍感力の塊になる……そういう人が一気に現れてきます。当時はアメリカ時間で夜になると日本と毎日電話会議があって、昼間は昼間でマスコミや様々な国家機関、車のメーカーやお客様に対応する。デイ・アンド・ナイトでそんなことを繰り返していると、1日3時間くらいしか睡眠が取れない。しかも、いろいろな人が逃げてしまったから、10分ごとに想定を超える最悪な案件が全部僕のところにやってきて、その場で決断をしていかなければならないんです。ある日会社に行ったら、みんなが「シュウ、大変だ。リコールされたタイヤを早期に交換する決断を30分以内にしないと、各州政府の司法長官がブリヂストンに訴訟を起こすと言っている!」と詰め寄ってくる。「それだけの訴訟を受けたら、会社は潰れるよな」と聞き返すと「間違いない」と。ただ、ブリヂストンとファイアストンのタイヤを当て込もうとしても時間がかかりすぎてしまって話にならないんです。対して競合のミシュランやグッドイヤーの同じサイズのタイヤを購入すればスピードを早めることができるものの、最大300億円くらいコストがかかる。それでも「会社が潰れるくらいなら他社から買おう」と、何百億円もお金が使える権限もないくせに決断して、夜の電話会議で日本にいる社長の海﨑に事後報告をしたら、案の定、ボロクソ言われました(苦笑)。でも「僕があの場で腹を決めなかったら、会社は潰れてましたよ」と伝えたら、さすがに彼も黙って理解してくれました。

加藤 企業がガバナンスやプロセスを無視できない今の時代では、当時の石橋さんのような決断のあり方はきっと難しいですね。

石橋 そうですね、現在では無理でしょう。いずれにしても極限の状態では、自分の全人格で決めなければならないということです。一方で僕の場合は、必ず創業者の石橋正二郎のことを考えるんですけど、彼は「最高の品質で社会に貢献」という言葉を大切にしていました。だから、常に自分がそこに背いていないかを元に決断する。その上で誰から何を言われても相手の目を見て説明できるかどうか、いざとなれば責任を取って辞める覚悟も、ファイアストンでの二度の修羅場で学ぶことができました。

2024

VOL.341

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