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「普遍的であるために上質なものづくりを目指しています」
―― 田中 健

デザインという言葉を聞くと、アーティストやデザイナーが苦心して生み出す特別なもの、というイメージを抱く方が多いかもしれない。しかし田中氏は、普段我々が当たり前に使っている日用品の中にも“無銘のデザイン”があると話す。そして、そこにこそ氏が目指す理想があるのだという。

「たとえば、普段我々が当たり前に使っているフォークを思い浮かべてみてください。先が櫛状に分かれ、わずかに湾曲していて食べ物を突き刺すこともすくうこともできるように考えられている。首のところで一度すぼまりつつ、持ち手の部分へ向かって緩やかに太くなることで、手馴染みがよくなるよう作られている。非常に優れたデザインですが、フォークをデザインした人というのは歴史上存在しません。このように自然と歴史が生んだ造形に比べたら、一個人のデザインなどはちっぽけに思えてしまうのです。ましてや実用のためではなく装飾目的で考えたデザインなどは無用とすら感じる。ですので、ザ・クラシックは“デザインしないこと”をひとつのテーマにしています」

もちろん“デザインしない”とは文字どおりの意味ではない。虚飾を拒み、普遍を愛する田中氏の美意識を比喩的に表したものだ。氏はそれを「意味のあるデザイン」とも称する。ブランド名をTHE CLASI“K”としたのも、ただのクラシックではなく、自らの視点でアップデートした普遍的な服を作りたいとの意気込みに由来するものだ。

普遍性の追求とは、最も難しいクリエーションでもある。それを叶えるために田中氏が重きを置くのは“上質さ”だ。

「以前はイギリスブランドのデザイナーを務めていましたので、英国的なマインドには多分に影響を受けています。いいものを長く使うとか、伝統を大切にするといった意識もそうですが、在職中に出会った『普遍的なものは最上級である』という、とある英国ブランドの哲学にも心を打たれました。逆に考えれば“普遍的なものを作るためには上質でなければならない”ともいえるわけで、クオリティは絶対妥協できないと決意させられましたね。そのためにはやはり、素材選びがまず重要になります。単に品質がいいだけではなく、“本物”であるということも大切。たとえばフォックス ブラザーズはフランネルを何百年にもわたって作り続けているわけで、他社には絶対に真似できないフランネルを作れる。これが“本物”の説得力だと思います」

加えて、田中氏の作品は素材の活かし方が実に巧みだ。

意味のあるデザインを突き詰めて描き出す最上級の普遍性_ザ・クラシック ポイント1

❶のコートはドーメルのウールコットン素材だが、これをバルカラーとポンチョを融合させたコートに載せることで、抜群のドレープ性を実現させている。裾のボタンを開けるとさらに表情が変わる点も面白い。

意味のあるデザインを突き詰めて描き出す最上級の普遍性_ザ・クラシック ポイント2

❷はフォックスフランネルのキルティングジャケット。同社の素材をこのように使うだけでも珍しいが、裏地にシルク生地を配してラグジュアリーに仕上げている点も独特である。ちなみにリバーシブル仕様で、シルクを表にしても着用可。

意味のあるデザインを突き詰めて描き出す最上級の普遍性_ザ・クラシック ポイント3

❸のボアジャケットも、実はシルクカシミア。一見カジュアルなようでいて極上の肌触りという意外性が面白い。伊フィオッキ社のスナップボタンを用いるなど、細かな付属まで上質にこだわっている。

意味のあるデザインを突き詰めて描き出す最上級の普遍性_ザ・クラシック ポイント4

❹のシャツ生地は、ポプリンの最高峰と名高いD.J.アンダーソンの200双。ドレスシャツ用の生地を、あえてリラックスしたバンドカラーにデザインしている。イージーパンツはドーメルのフラノ素材で、ドレス感のある風合い。サイドシームのない仕立てを採用し、肌当たりをスムースにしている点にも注目だ。

クラシックという言葉は、実に多彩な意味をもつ。古典、模範、一流、最高級、歴史に残るものetc.……これらはすべてザ・クラシックの哲学に通じている。まさに、田中氏の服作りを象徴するキーワードなのだ。



[MEN’S EX 2021年10月号DIGITAL Editionの記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
※表示価格は税込み。

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