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「伊(イタリア)の仕立て服にも影響を受けつつ自分ならではの表現を続けています」
―― 平 剛

ラ ファーヴォラは服飾業界人たちの熱烈な支持によってクチコミで広まり、ブランドとして本格展開に至ったという背景をもつ。発足当初はデザイナーである平氏が自ら針と糸をもち、ハンドテーラリングで仕立てるビスポークのみ。そもそも、自分用に趣味で作った服が業界の友人たちの目に留まり、彼らに請われて仕立て始めたのがきっかけなのだという。

「両親の家系がテーラーだったこともあって、10代のころから趣味で服を作っていたんです。最初の就職先が縫製会社だったので、そこでも技術を習得しました。その後しばらくは服作りをしていなかったのですが、2015年に自分用のスーツを作って、それを着てピッティの時期にフィレンツェを訪れたんです。そうしたら、“それどこのスーツ?”って結構訊かれて。自分で作ったと答えたら、“今度オーダーさせてよ”と言ってもらえたんです。そのときはお世辞半分かなと思ったのですが(笑)、その後本当に注文をもらえて、そこからラ ファーヴォラとしての活動が始まったんです。数年後にはショップでオーダー会を開かせてもらえることになって、徐々に規模が広がっていきました。その流れでプレタの展開も始めて、今に至っています」

服飾業界人からの熱烈な支持で始まった無二のテーラリングブランド_ラ ファーヴォラ アップ

服のプロたちを虜にしたのは、圧倒的な独自性だった。当時、市場に出回っていたのは、着丈の短いスリムフィットスーツばかり、そこに❹のようなドロップショルダーでゆったりとしたシルエットのダブルスーツを、ノータイでカジュアルダウンして着こなした平氏が現れたのだから、注目が集まるのは当然だったというわけだ。

「どちらかというと、女性がガバッと羽織るジャケットをイメージして仕立てたものでした。当時ダブルスーツといえばタイドアップして重厚に着るものという感覚が強かったですが、あまりそういった意識はなかったですね。カジュアルにサラリと着るダブルスーツを作りたいと思っていたんです」

時代を先取る形になったわけだが、カジュアルに着るスーツがすっかり浸透した現在においても、ラ ファーヴォラは唯一無二の地位を保っている。平氏がフィレンツェやナポリの仕立て服をこよなく愛し、あくまでクラシックな技とマインドをバックボーンとしているからだ。その美意識は、スーツと並ぶ定番のラップコート(❶)にも色濃く表れている。蹴回しをたっぷりとったAラインは肩肘張らないリラックス感をたたえているが、上襟をノボらせ首で服の重量を支えることで着心地を軽くする技法や、肩線から袖にかけて流れるような曲線美を追求したパターンメイキングはクラシックへの深い造詣から生まれたものだ。ちなみに背面にはインバーテットプリーツが配されている。新作のピーコート(❷)もナポリのサルトリアを巡って彼らの仕立てから影響を受けたもので、アームホールをジャケットのように設計して格段に腕を動かしやすく作られている。❸はカバーオールをベースとしているが、こちらも上襟をノボらせて襟周りをしっかりフィットさせている。フランネル素材とメタルボタンを採用した新作は、ブレザー感覚で着られるようにと考案されたものだ。

以上はプレタの展開だが、原点であるビスポークも継続中。❹はスーツのサンプルで、広い肩幅と低いゴージラインをハウススタイルとしている。斜めにとったフロントダーツも印象的だが、これは体を包み込むような雰囲気に見せる効果があるという。仕立ては非常に柔らかいが、襟芯は硬めのものを用いて端正に仕上げ、全体にメリハリを生んでいるのも平氏らしい。

「ブランドの立ち上げにあたっては、友人のサルトたちにもずいぶん助言をもらった」と平氏。尽きることのないパッションと熱い友情が生んだ、ほかには決して真似できない作風だ。



[MEN’S EX 2021年10月号DIGITAL Editionの記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
※表示価格は税込み。

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