「2040年までにEV、FCVの比率を100%に」

にもかかわらず、三部社長は「2040年までにEV、FCVの比率を100%にする」と宣言しました。これほど大胆な目標を掲げた自動車メーカーは、日本にホンダ以外なく、このため、その達成を疑問視する声も少なくありません。

敢えて困難な目標を掲げた理由を、三部社長は次のように説明してくれました。
「今回の目標は2、3年前から考えていたものです。欧米はカーボンニュートラルに向けて積極的に取り組んでいますが、日本の対応は決して早くありません。このままでは日本が世界から取り残される、つまりガラパゴス化する恐れがあったので、具体的な数字を掲げて目標を明確にしました。もうひとつ、ホンダ社内の動きを加速させることも狙いのひとつでした」

ホンダは、1970年代初頭に独創的なCVCCエンジンを製品化。世界中の自動車メーカーが「達成は不可能」と指摘した“マスキー法”(当時、世界でいちばん厳しいといわれたアメリカの排ガス規制のこと)を、このCVCCエンジンでいち早くクリアした実績があります。
「独創的な技術で不可能を可能にする」
ホンダ社内で綿々と受け継がれてきたそんな強い思いが、三部社長の宣言を後押ししたことは間違いなさそうです。
文=大谷達也 写真=本田技研工業 編集=iconic