日常的な使い勝手で確かな余裕を感じさせる
意外にもスタンダードモデルのパワートレインは、前期モデルの1.4リッター+6速DSGから1.5リッター+7速DSGへ、大きく変更されている。低負荷走行時に4気筒の内2気筒を積極的に休ませるシリンダー休止機構を備えた、150ps /250Nmというガソリンエンジンに標準を一本化したのだ。秋以降に導入されるティグアンRというスポーティかつ4モーション(4WD)仕様については、2リッターの320ps/420Nm仕様が用意されるが、SUVでは根強い人気のディーゼルはあえてラインナップされない。
つまり標準スペックはかなり控えめで、走りで主張するタイプではないのか?と思われがちだが、実際はさにあらず。長い上り坂でイラッとさせられるほど非力なパワートレインでもなければ、峠の下り道で怖い思いをさせられるほどヤワな足まわりではない。ステアリングを切ってノーズがインに向くまで、もっさりしているどころか、むしろSUVという車型に対して好ましいほどシャッキリしている。コーナー出口でアクセルを強めに踏むと、直線的に立ち上がる程度に軽いキックバックはあるが、扱いにくさよりスタビリティ重視のハンドリングといえる。いわばハッチバックに乗り慣れた人がSUVに乗り換えたら感じられるような、テンポの鈍さは感じさせず、乗り心地もストローク感があって滑らかだ。
試乗したのはレザーパッケージだったが、ゆとりある腕まわりと適度な包まれ感の大ぶりなシートに、VWらしく理路整然としたダッシュボードと、見切りのよい視界は、ドイツ車に機能性を求める人にはおなじみのもの。
それでいて荷室容量はハッチバックよりはるかに大きく、パワーハッチゲートなのでボタンひとつで開閉できるなど、日常的な使い勝手で確かな余裕を感じさせる。そうした心地よさに焦点が合ってくる、そんなSUVといえる。
ちなみにハッチバックと比べて大ぶりと思われやすいSUVだが、今や外寸的には横幅が+4cmほど、全長も+20cm強ほどしか変わらない。味わってみないと分からない、しかし定番として確かな安定感と進化ぶり。それこそひと昔前のゴルフに備わっていたような魅力が、マイナーチェンジされたティグアンの魅力なのだ。
文=南陽一浩 写真=フォルクスワーゲン グループ ジャパン 編集=iconic