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仕様の違いにかかわらず、時代の価値観を代表する

フォルクスワーゲン ゴルフ8
先代同様の横置きエンジン用モジュラープラットフォーム(MQB)をベースに、サブフレームまわりなどを強化。スタータージェネレーターとリチウムイオンバッテリーを用いたマイルドハイブリッドを採用し、WLTCモード燃費を1リッターモデルでは18.6km/L、1.5リッターモデルは17.3km/Lとしている。

では走りでどんな違いが出ているか? 気になるところだが、まず差の出ていない点として、ACCとレーンキープアシストを組み合わせた「トラベルアシスト」機能の安定制御について触れておきたい。

高速道路などを巡航中に、眼前のメーターパネル内には前走車と左右3車線分まで、両隣の車線の他車を映し出してくれる。これはクルマのセンサーやカメラ、レーダーによる認識システムが、モニター把握できているというサインで、それをドライバーがリアルタイムに目で確認できる点に、安心感がある。ステアリングに添えるべき手も、静電気センサーであるため、それこそ指で触れ続けるだけで警告は出ず、負担は軽い。

さらに遅い前走車と車間距離が詰まる場面でも、減速ブレーキは遠くにいるうちから徐々にきき、左右の車線に対するポジションキープも正確なので、ずいぶんと安心して使える運転支援機能であると感じられる。

高速道路を下りて際立つのは、1.5リッターの余裕、1リッターの健闘ぶりだ。信号が変わってからのゼロ発進から、登り坂の車線合流まで、電気によるアシストが適宜オーバーライドして、加速で物足りなさを感じる場面が両者とも、ほとんどない。

強いていえば1.5リッターの方が重厚な余裕は感じさせるが、1リッターの軽快さも捨てがたい。いつでも電気でスタンバイしているがゆえの出足の鋭さ、トルクの太さがある。ハイブリッドにつきものの回生ブレーキは、スライドレバーにまでコンパクト化されたシフトをDからひとつ引いて、Bに入れると強まる。それでも頭を強く揺するほどの減速Gではなく、ゴルフらしい中庸の感覚は保たれている。

フォルクスワーゲン ゴルフ8のインフォテイメント
新世代通信モジュール内蔵のインフォテイメントとデジタルメータークラスター(デジタル コクピット プロ)を標準装備。スイッチ類などを減らし、運転席回りはシンプルな仕立てとされた。

むしろ戸惑うのは、右手側のライトスイッチから10.25インチのメーターパネル、10インチの大型タッチスクリーンに至るまで、走行に関わる操作と情報がインフォテイメントまで水平に繋がれた、デジタルコクピットだろう。

フォルクスワーゲン ゴルフ8のディスプレイ
ディスプレイはわずかにドライバーへ向けた配置に。ディスプレイ下部には機能に応じ、指の本数を使いわけて操作するタッチスライダーが備わる。

多くが押し込んでもストロークしないタッチ式で、ダッシュボード直下にはスライダースイッチが設けられ、音量やエアコンの風量や温度を調節できる。ただ長押しやタップにまで熟達すると、地図スクロールやルームランプも操作できるそうだが、初対面では難儀した。慣れの問題かもしれない。

フォルクスワーゲン ゴルフ8 eTSI Rライン
こちらはスポーティなトップグレードのeTSI Rライン。1.5リッターエンジンを搭載、専用セッティングのサスペンションなどを装着している。

1リッターか1.5リッターかという排気量にかかわらず、ハイブリッドの力を借りて軽快な動的質感を実現し、操作インターフェイスという点では時代の最先端タッチを採り入れたゴルフ。そこからは、定番であり続けようとするより、より若いカスタマーを開拓しようという意欲を感じた。

今回は試乗していないが、もっとも安価な291万6000円の「eTSIアクティブベーシック」でも運転支援機能は省かれておらず、「eTSIスタイル」で370万5000円、「eTSIアクティブ」で312万5000円となる。高いと思われるかもしれないが、VW ゴルフが常に時代の価値観を代表するモデルであり、自分の価値観を試してくるクルマであることは忘れてはならない。それでこその、大定番なのだ。

文=南陽一浩 写真=フォルクスワーゲン グループ ジャパン 編集=iconic

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