異常に長いノーズの理由
それにしても、恐ろしく長いノーズを持っている。ロングノーズ&ショートデッキは、スポーティーカーのパッケージングを語る際によく使われるフレーズで、フロントに大きなエンジンを積むからノーズは長くなり、できるだけキャビンや荷室は小さくしたいからデッキも短くなるというセオリー。けれどもメルセデスAMG GTシリーズのそれは“度を越している”。
超ロングノーズの超ショートデッキなのだ。ノーズの部分だけで車体全長の3分の1を越えそうな勢い。そして低く幅広く、全体的なボリュームもある。こんなパッケージのスポーツカーは近年ではとってもマレ。そんな異形のクルマのノーズにスリーポインテッドスターが燦然と輝いているものだから、存在感もいっそう際立つ。言ってみればミスマッチの魅力だ。
そして、これが何よりも重要なことなのだが、異常に長いノーズの理由である。ごく普通に考えたならば、そこに大きなエンジンが収まっているから、だろう。けれどもその答えは合っているが、間違ってもいる。
確かにAMG GTシリーズに搭載されているエンジンは最新ゆえにコンパクトに設計されてはいるもののダウンサイズ時代の今となっては大きい部類だ。もはや大排気量というべき4リッターのV8ツインターボである。とはいえ、流石にボディサイズの3分の1を占めるほど巨大なユニットではない。では、なぜかくもノーズが長いのか。
写真をご覧いただくと、スリーポインテッドスターとAMGロゴの入ったエンジンカバーが見える。そこにはこのエンジンを組み立てた職人のサイン付きプレートも貼られている。“ワンマン・ワンモーター”の証しだ。普通ならこのカバーの下にエンジンがあると思う。けれどもAMG GTの場合は違う。カバーの下には補機類しかない。エンジンはキャビンに向かってめり込むようにして収まっているのだ。
つまり、完全にフロントアクスルよりも後ろ、しかもドライサンプ方式を採用してかなり低い位置にエンジンが縦に置かれている。通常、エンジンと一体となるトランスミッションは切り離されてリアアクスルに配された。完全なるフロントミッドシップのトランスアクスルという、エンジン前置き後輪駆動(FR)にとっては理想的なスポーツカーパッケージだ。このパッケージを採用したからこそ、AMG GTは超ロングノーズでワイド&ローなのだ。












