「海外でも電車やバスを乗り継いで妻へのお土産を探しに行きます」(山本さん)
バイソンを射る、対戦相手を倒す武器としてのアーチェリー論
丸山 今後、アーチェリーのファンを増やすために、先生はどのようなことが必要だと思われますか?
山本 アーチェリーは残念ながらマイナー競技です。イギリスで軍隊の最前線に立つ歩兵の武器が発祥で、剣を持つ兵隊よりも位が下なので、本国の酒場では“アーチャー”なんて笑われることもあります。日本の弓道の場合は、将軍が好んだ武道なのでまた事情が違いますが。
丸山 先生は弓道もお上手なんでしょう?
山本 ピッチングでいえば、野球とソフトボールぐらい可動域が違いますね。横道に逸れましたが、アーチェリーのように武器から始まった競技は観客もあまり面白味がないというのが僕の自論。サッカーのように遊びから進化したスポーツにはかないません。
丸山 武器と遊びの違いなんですね。
山本 だから、アーチェリーもバージョンアップしたらいいと思います。もっと観客が盛り上がるような演出をするなど、百年後、千年後に生き残っていくには、残すべきものは残しつつ、慣習を打ち破ってアップデートしていく部分も必要だと思うんです。
丸山 対戦型になったら、先生も参戦されますか!?
山本 僕はやりたくないですけれど(笑)、観たい人は増えるんじゃないかな。そもそもアーチェリーは競技人口が少ないという問題もあります。矢はアメリカ製が主流で1本7000円なので、1ダースだと約8万円。学生ではなかなか手が出ませんよね。
丸山 アメリカではメジャーなスポーツなんですか?
山本 競技人口自体はそれ程でもありませんが、ハンティング人口がものすごい。推定何百万人です。
丸山 アーチェリーで狩猟とは! バッサバッサ射るんですか?
山本 銃での猟は簡単すぎるので、アーチェリーをやらせたい親が多いんです。ただし、アーチェリーのハンティングは地味らしいですよ。木の上でじっと獲物を待つ。
丸山 ほとんど忍者じゃないですか!(笑)
山本 かつては、バイソンなどの大物も獲れたそうです。僕は動物好きなので興味はありませんが。
丸山 原始的だなあ。
山本 アーチェリーがメジャーになるためには、丸山さんのようにキャラクターの立った魅力的な選手も必要だと思いますね。
丸山 ありがとうございます。
山本 韓国のチェ・ホソンさんもユニークですよね。アーチェリーの場合、強豪国の選手がオーバーフローすると、引退して世界中でコーチに就くのでフォームが画一化しがちなんです。だから、もっと個性が際立つ選手が出てきたら面白いんじゃないかな。
丸山 ゴルフにしても、今はコピーロボットがミサイルを撃ち合っているようで玄人的には味気ない。昔はアドレス次第で200ヤード前からでも「ジャンボ尾崎さんだ!」などとわかったものでした。アーチェリーにしても、匍匐前進で進んだ末にガサッと小気味よく相手を打ち負かすような、手に汗握る試合を観たいものですね。
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[MEN’S EX 2020年11月号の記事を再構成]
撮影/筒井義昭 スタイリング/松純〈丸山さん〉、山田陽子〈山本さん〉 文=間中美希子