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加藤綾子さん、藤倉 尚さん

「日本のアーティストも世界で戦える新しいルールを身につける時です」
(藤倉さん)

加藤 藤倉さん自身は今、どんなことを妄想していますか?(笑)

藤倉 ひとつは社員にも投げかけているんですが「今の売り上げが倍になったら、このオフィスの中にコンサートホールや託児所を作れるかもしれない。給料やボーナスがちょっと上がるくらいじゃ全然面白くないけど、自分たちができることの可能性が広がるとしたら、何がしたい?」と。もうひとつは自分の中だけで妄想していることですが、日本人のアーティストが世界で1位を取ることができるようになれば、業態は変わるかもしれませんが、音楽に限らず、日本の様々な才能を海外に届ける会社になってもいいかもしれない。現代美術家でもアスリートでも、それこそ今は妄想の範疇ですけど、その中にはきっと実現できることがあると信じています。

加藤 ちなみに他の記事で読んだことがあるんですが、藤倉さんは周囲から「社長になれないと言われていた」と……(笑)。

藤倉 過去の社長たちが英語の流暢さを標準装備していたので、私がどんなにいい仲間やアーティストに恵まれて成果を挙げていたとしても、確かに「お前はむずかしいよ」と言われていました……(笑)。実際に社長になることを望んでもいなくて、役員になった頃などは、好きな仲間と信じた音楽を作ることより数字を達成することが求められるようになって「仕事がつまらなくなってきたなぁ」と思っていたくらいで(苦笑)。でも、そんなときにメンターから「もしも社長になったら何がしたい?」と唐突に尋ねられたことがあって、「社長になることは目的ではなく手段で、そこに立てばルールを変えることができる」と気づかされて、そこで初めて「やってみてもいいかな」と思いましたね。

加藤 実際に社長になられてどうルールを変えられたんですか?

藤倉 社員の多くが1年更新の社員だったのですが、全社員を正社員化しました。というのも自分がそうだったんですが、毎年契約を更新してもらえるか不安だったんですよね。ヒリヒリしながら一生懸命やることはいい部分もありますけど、クビになった場合のことを考えて少しでも転職活動などの「保険」をかけることを考えてしまったり、仕事に全力を尽くせないのはアーティストに対しても不誠実だなと思ったのがひとつの理由です。

加藤 そうした新しい制度を、結果を出した上で本国に理解をしてもらった藤倉さんの手腕が素晴らしいです。最後に今後の目標を教えてくださいますか?

藤倉 先ほどの話の繰り返しになりますけど、音楽はもちろん、広いジャンルでも日本のアーティストを世界にどんどん届けたいです。それと僕は45歳で社長になったときに「勘違いしないように自分が得意じゃないことをやろう」とサーフィンを始めたんですけど、プライベートではむしろ苦手なことにトライしていきたいと思っています。料理をやろうと思って通い始めたABCクッキングやヨガや中国語は、すぐ挫折しちゃったんですけど(苦笑)。

加藤 藤倉さんが料理教室に(笑)! 私もその姿勢を見習って、妄想力を磨いてがんばります。

カトMEMO

  • 圧倒的な熱量を持ち続け、初心を忘れない。
  • 情熱は信頼関係を築くのに欠かせない。
  • 世界を視野に入れてビジネスを考える。
  • 仕事に取り組む時の9割は将来を見据える。
  • データも大事だがそれ以上に気持ちや妄想が大切。

※表示価格は税抜き
[MEN’S EX 2020年10月号の記事を再構成]
撮影/柏田テツヲ スタイリング/後藤仁子 ヘアメイク/久保フユミ 文/岡田有加(81)

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