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今回、我々は初心者向けの中辺路コース、発心門王子という場所からスタートすることにした。片道約3時間で目的地の熊野本宮にたどり着くという。ちょっと恥ずかしい話だが、壮大なスケールの参拝道、その最後のおいしい部分だけ味わえるというお得なコースである。

さて、参拝道には「九十九王子」と呼ばれる王子社が存在する。これは道しるべのようなもので、場所に因んだ名前が付けられている。我々がスタート地点に選んだ「発心門王子」は、仏道に入ることを意味する「発心」、そして鳥居がそばにあったことに由来する。つまり、ここは聖域への入り口にあたることを意味しているのだという。

早速スタート地点までバスで移動。発心門王子から歩き始める。全体のアップダウンはかなり緩く、歩き馴れている人であれば問題ないレベルである。ちょっと面白いのはずっと使われてきた道をそのまま使っていることもあり、下手に迂回しない分、山深いところもあれば、地元の方の生活圏のすぐ脇を通ることもある点。道も砂利道、舗装路、未舗装路と様々で過度に整備されていない。かといって道の8割を占める大自然に囲まれたエリアは壮大で、疲れてなくても腰を下ろして風景を楽しんでいたくなる。なんでも過去の参拝者の中にはこのエリアの絶景を楽しむため、ルートを変えて何度も訪れる人も多かったそうだが、それも頷ける景観である。

30分ほど歩くと「水呑王子」に到着。ここは読んで字のごとく旅人が休憩する場所で、当時は宿場などもあったそうだ。さらに先へ進むと「伏拝王子」という場所に着いた。ここは長い旅を経て辿り着いた本宮を見て、感動した人々がその風景を伏せて拝んだことから名前が付けられているという。

さらに進むと大斎原の絶景が見える展望台があり、そこを過ぎると「祓戸王子」に到着する。ここは長い旅の汚れをおとし、身をきれいにしてから本宮を訪れるための場所なのだそうだ。先人たちが見た風景や当時の雰囲気が味わえる、これが熊野古道トレッキングの魅力なのだろう。

「祓戸王子」を越えると本宮はもう目の前だ。道のりはやはり3時間ほど。最後に本宮で参拝をし、ちゃっかり御朱印も押してもらった。

今回、途中で夫婦や友人、一人で楽しんでいる人たちも見かけた。静かで厳かな場所はやはり一人や少人数で楽しむほうがいいだろう。気軽に1000年以上前の日本に旅したかのような熊野古道トレッキング。ぜひとも今度は別のルート、距離を伸ばして楽しみたいところである。

熊野古道(画像4点)

古くからトレッキングのコースとして人気が高く、パワースポットとしても知られている熊野三山。複数のルートの中で最も有名なのが京都から大阪、和歌山を通って向かう「紀伊路」と山中を歩く「中辺路」。現在は一部封鎖している区間を迂回する必要があるが、自分の体力に応じてスタート地点を決めることもできる。今回は熊野本宮大社近くの駐車場にクルマを停めてそこからバスで移動する方法をとった。

熊野古道

住所:和歌山県田辺市本宮町本宮1110(熊野本宮大社)
電話番号:0735-42-0009
http://www.hongutaisha.jp/

[MEN’S EX 2020年6・7月号の記事を再構成]
(スタッフクレジットは本誌に記載)

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