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1968年「300mダイバー」
初代の誕生から3年後に登場した通称「300mダイバー」では、裏蓋のないワンピース構造のケース採用により、一気に倍の300m防水へスペックアップ。同時に、当時世界最高水準の10振動(毎時3万6000振動)ハイビートムーブメントを搭載し、従来の自動巻きに手巻き機能が追加された。
1968年「300mダイバー」(フォトギャラリー2点)
デザイン面ではケースがより湾曲した形状となり、リューズは4時位置に移動。インデックスも中央を金属で仕切った12時位置の大型、角型、丸型の融合スタイルにして、いっそうダイヤルの判読性を高めた。
なお、本作は1970年、冒険家の植村直己氏らによってエベレスト登頂に使用されたことでも有名な1本となっている。
1975年「600mダイバー」
1968年、広島県呉市に在住のプロダイバーから寄せられた手紙により開発が始まったこのモデル。潜水カプセルを使い、350mの深海で作業をするプロダイバーからの要請は、空気潜水を前提としたダイバーズでは、高圧ヘリウムガスを呼吸気体として用いる飽和潜水システムには耐えられないというものだった。
そこで当時の開発リーダーであった田中太郎氏を中心に、より深海での作業に耐えうる飽和潜水用ダイバーズの開発がスタート。耐圧性や視認性、ヘリウムガスの侵入を防ぐ気密性など、おもに外装面における大幅な見直しが図られた。
1975年「600mダイバー」(フォトギャラリー2点)
特徴的なのはそのケースであり、ワンピース構造の本体には、ダイバーズ時計では世界初となるチタン素材を採用。さらに、セラミック粒子を溶射処理したチタン製プロテクター付きの二重構造にしつつ、ケース内のパッキンの素材や形状を見直すことで水密性・気密性を確保し、当時世界最高峰の飽和潜水600m防水を実現したのである。
また本作は、水中での装着性に考慮した蛇腹式ウレタンストラップなど、外装だけで特許含め23件の独自技術を網羅した。
この二重ケース構造は後継のセイコーダイバーズにも脈々と受け継がれ、その独特の外観から、世界中で“ツナ缶”の愛称で親しまれている。技術・デザインの両面において、ダイバーズ時計史のマイルストーンとなるエポックメイキングな1本だ。