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現在では当たり前となっているクォーツ式のデジタル時計だが、「ハミルトン パルサー」が登場した50年前、当時の人々に与えたインパクトがどれほど大きかったかは想像に難くないだろう。本作は、その前年にセイコーが小型の腕時計化に成功したクォーツの技術を活かし、発光ダイオード(LED)の赤色の光によって時間表示を実現している。一方、セイコーが発表した「クォーツ アストロン」は昔ながらのアナログ針表示であり、本作の登場で機械式とは異なるクォーツの可能性が初めて世に示されたともいえるのだ。

プロトタイプ発表から2年後の1972年に「ハミルトン パルサー」は発売を開始する。ゴールド製のケースとブレスレット、400本限定の初号機「P1」は、2100ドルで販売された。これは当時の相場でクルマ1台分に相当する超プレミアム価格だった。

翌年、機能性やデザインに改良を加え、汎用品として発売されたのが「P2」と呼ばれるモデルである。「P2」は横長クッション型ケースの3時位置に備わるボタンを長押しすると、時・分、秒、日付が約1秒ずつフラッシュ表示され、ブレスレットのバックルに隠された小型磁石を裏蓋に押し当てることで、それぞれの調整が行える斬新な仕組みとなっていた。

こうして世に出た「ハミルトン パルサー」は、エルヴィス・プレスリーやフォード大統領といった国内外の著名人をも虜にしたばかりか、スクリーンの中では『007』シリーズのジェームズ・ボンド(’73年公開『007 死ぬのは奴らだ』)が腕に着け、その先進性がアピールされた。

また、当然のように世界各国の時計メーカーが後を追い、LEDデジタルウォッチは一世を風靡することとなる。「ハミルトン パルサー」も「P3」「P4」と後継機になるにしたがい機能性が向上していったが、LED製品の過剰供給による値下げ競争と、より利便性の高い液晶(LCD)が勢いを増す中で、70年代末に「ハミルトン パルサー」ブランドはハミルトンの手を離れていった。

50年を経て変わったこと

そして、「ハミルトン パルサー」のプロトタイプ発表からちょうど半世紀を経た今年、この「P2」をベースにした復刻モデル「ハミルトン PSR」が登場した。最新の3D技術を駆使し、アヴァンギャルドな横長クッションケースをデザイン・サイズともそっくりそのままに再現しつつ、人工ルビーの風防はサファイアクリスタル製にアップグレード。

さらに、当時は1秒程度の点灯しか叶わなかった画面は、液晶+有機ELのハイブリッドディスプレイの導入で常に数字を表示させることを可能にした。ステンレススチールモデルのほか、限定のイエローゴールドPVDモデルも用意され、6月より一般発売がスタートする予定だ。

「ハミルトン PSR」のディテールをチェック!(フォトギャラリー12点)

「ハミルトン パルサー」が登場した1970年といえば、アメリカでアポロ13号が打ち上げられ、日本では大阪万博が開催された年。人々が未来に夢や希望を抱き、新しいテクノロジーを生み出す活気に満ちあふれていた。

そんな時代をまさに象徴するのがこのモデルであり、レトロフューチャーなその外観はたんなるノスタルジックではない何かを感じさせてくれるはず。機械式時計ももちろんいいが、たまにはこういった遊び心ある歴史的クォーツモデルで日常をリフレッシュしてみてはいかがだろうか?

ハミルトン PSR

液晶ディスプレイと有機EL(OLED)テクノロジーを組み合わせたハイブリッドディスプレイ搭載のデジタル表示モデル。イエローゴールドPVDモデルのみ世界1970本限定で、限定ボックス付き。6月より全国のハミルトン正規販売店にて一般販売開始予定。

ケースサイズ:W40.8×H34.7mm
ケース素材:ステンレススチール/ステンレススチール(イエローゴールドPVD)
ブレスレット素材:ステンレススチール/ステンレススチール(イエローゴールドPVD)
ムーブメント:クォーツ
価格:9万円/12万円(イエローゴールドPVDモデル)
発売時期:2020年6月予定
お問い合わせ先:
ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン TEL:03-6254-7371

文/岡崎隆奈
※表示価格は税抜き

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<p>1972年発表のパルサー「P1」</p>

1972年発表のパルサー「P1」

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1972年発表のパルサー「P1」

<p>1972年発表のパルサー「P1」</p>

1972年発表のパルサー「P1」

<p>1972年発表のパルサー「P1」</p>

1972年発表のパルサー「P1」

<p>1972年発表のパルサー「P1」</p>

1972年発表のパルサー「P1」

<p>1972年発表のパルサー「P1」</p>

1972年発表のパルサー「P1」

<p>翌1973年に発表され、今回のPSRの原型となった「P2」</p>

翌1973年に発表され、今回のPSRの原型となった「P2」

<p>翌1973年に発表され、今回のPSRの原型となった「P2」</p>

翌1973年に発表され、今回のPSRの原型となった「P2」

<p>翌1973年に発表され、今回のPSRの原型となった「P2」</p>

翌1973年に発表され、今回のPSRの原型となった「P2」

<p>翌1973年に発表され、今回のPSRの原型となった「P2」</p>

翌1973年に発表され、今回のPSRの原型となった「P2」

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