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移り変わる京の季節に包まれる「水辺の私邸」

「星のや京都」といえば、京都を愛する人なら一度は泊まってみたいデスティネーションだ。嵐山のシンボルである渡月橋からゲスト専用の渡し船に乗り、大堰川(おおいがわ)を遡ること15分。水辺にひっそりとたたずむ宿にたどり着く。客室はすべてリバービュー。数寄屋造り風の部屋からのぞむ自然の風景は、まるで額縁におさめられた絵画を眺めているよう。

星のや京都

意匠を凝らしたモダンな空間と息をのむ絶景に後髪をひかれつつ、この時期ならではの華やかな京料理を堪能するとしよう。ダイニングでふるまわれる会席「五味自在」は、伝統を重んじながらもその枠にとらわれることなく、食材や調理方法を“自在”に取り合わせ、日本料理の新たな可能性と奥行きを広げている。

手がけるのは、京都で生まれ国内外の名店で研鑽を積んだ「星のや京都」総料理長の久保田一郎氏だ。たとえば出汁には、日本料理での基本である鰹や昆布だけでなく、様々な魚介類のアラから抽出した出汁にハーブのニュアンスを合わせるなど、西洋の技術も用いて春野菜にさらに旨味をプラス。久保田氏の経験が一皿一皿に投影されているようで面白い。

星のや京都

3月から4月までのテーマは「芽吹きや香りを味わい、春の華やかさを楽しむ」。山菜や筍などの旬の食材をふんだんに使い、春らしく彩られる嵐山の華やかさを表現しているという。

先附の「春貝の錦和え」のあとに出てきたのは、花が咲き乱れる情景を表現した八寸「春爛漫の肴核」。山ウドやアスパラガス、うすい豆をコンソメでまとめ、芽キャベツといくらを添えた「春菜寄せ」。スモークサーモンと胡椒で香りづけしたチーズをじゃがいもに詰めて揚げた「馬鈴薯のファルス」など、和洋折衷のモダンで滋味深い料理が華やかに並ぶ。

星のや京都

椀ものは、「桃花餅白味噌仕立て」。桃の節句にちなみ、雛人形と共に飾られる菱餅の3色をお椀に彩った。白色は「清浄」、緑色は「成長」、ピンク色は「厄除け」を意味しており、女の子の健やかな成長を願う意味を込めている。

星のや京都

そしてこの季節の京都で必ず食べておきたいのが、筍だ。えぐみが少なく柔らかい筍を使った「筍飯」は、コクと香ばしさを加えるために穴子の幽庵焼きを合わせ、さらに香り豊かに。歯触りの良い筍の食感と、穴子の焼骨の出汁で炊いたご飯の旨味をたっぷり堪能できる一杯だ。

星のや京都

この京会席には料理だけでなく、器や盛り付けにも春めく物語が詰まっている。

焼物「鰆の菜種焼き」に使用している皿は、季節の始まりと生命の誕生を意味する草花と吉祥紋をのせた「染付芙蓉手楕円皿」。また、向附の「変わり造里小春見立て」に使用した「青瓷蓮菜形向付」は、蕗の葉に残雪がのって小春の幸を届けるという総料理長のイメージを、作家が蓮の葉で表現したという。どちらの器も、京都の若手作家である小坂大毅氏が作陶したものだ。まさに五感に訴えてくる、この雅な春会席。京の奥座敷で、しばし時を忘れ非日常に浸ってはいかがだろう。

星のや京都

星のや京都「芽吹きや香りを味わい、春の華やかさを楽しむ」京会席

期間:2020年3月1日〜4月30日
料金:1名2万円(税・サービス料別)※宿泊料別
場所:星のや京都 ダイニング
時間:17時30分〜20時30分(最終入店)
予約:公式サイト
またはフロントにて、当日17時までに予約
※宿泊客以外も利用可
※仕入れ状況により、料理内容や食材が一部変更になる場合があります。

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文/一井 智香子 

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