綿谷寛画伯のコンサバお洒落歳時記・第一回「秋のリネンスーツ」

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ただ流行を追いかけるだけでなく、1年を通して季節の旬なアイテムや行事の楽しみ方を知っている。そんな男性こそ真に成熟した、紳士といえるだろう。粋な趣味人を目指すため、四季で味わいたいモノ・コトを季題に取りあげた、お洒落の歳時記を画伯が紹介する。

秋のリネンスーツ

絵と文・綿谷 寛

今月からスタートした新連載『綿谷画伯のコンサバお洒落歳時記』。企画の言い出しっぺは自分だけど、俳句なんてこれまで詠んだ試しがない(笑)。提案してみたもののちょっと後悔。左ページの絵をお楽しみに。

今月のお題 秋のリネンスーツ

今小誌9月号(8月6日発売)の原稿を書いている(7月25日現在。校了日。汗)というのに、未だ梅雨明け宣言がでない東京。これじゃ夏本番を迎えたと思ったら、アッという間に秋の声。9月ですよ。

とはいえ、まだまだうだるような暑さが続く9月。初秋のこの時期の服装は悩みますね。コンサバ歳時記男子としましては、秋の声を聞くマドラスチェックやシアサッカーのサマージャケットは着たくない。さりとて、セレクトショップの販売員じゃないんだからフラノやツイードで季節の先取りなんてとっても無理。世間はこの時期も引き続きクールビズなんだけど、暑けりゃノータイ、上着は脱げばいいだろう的な大雑把な季節の捉え方はしたくない。クールビズのみんな、ゴメンね。ボクってめんどくさいヤツなんです。

昨年の今ごろ、初めてリネンのスーツを仕立てた。意外だろうと思うけど還暦にしてホント初めて。何でこれまでリネンのスーツを避けてきたかというと、自分の体型的コンプレックスの一つでもあるO脚が目立ってしまうから。ご承知のようにリネンはシワになりやすい。それが素材の味わいでもあるのだけれど、このシワによってO脚がさらに強調されるようで敬遠……。それがただの食わず嫌いだと知ったのは、昨年某テーラーでW・ビル(1846年創業。英国のカントリー服地マーチャント)の「ファイン・アイリッシュリネンズ」と出会ってから。欧州産原料を使用しアイルランドで製織されたというW・ビルのアイリッシュリネンは美しい光沢と風合い、豊かな色調を特徴とし、その品質の良さは折り紙付き。その中からボクが選んだのはウエイト380gという最も厚手なヴィンテージコレクション。色はやや黄色味がかかった淡いベージュでまるで南国の白い砂浜のようだ。これを骨抜きのダブルブレストのスーツに仕立ててもらったのだが、見た目は軽やかで涼しげな春夏スーツ。しかし実際に袖を通すとズシリと重く、通気性に優れたリネンにもかかわらず厚手なためかなり保温性が高い。ていうか、真夏はとてもじゃないが暑くて着れない。何より意外だったのは、厚手で張りがあるからシワによるO脚が思ってたほど気にならなかった、これは嬉しい誤算だった。おそらくこのヘビーウエイトのリネンは5シーズンくらい着込んでようやく体に馴染むのだろう。

秋のリネンスーツ

スーツによし!バラしてよし!
厚手リネンは初秋がお似合い

さてこのリネンのスーツ。見た目はパナマ帽にホワイトバックスがピッタリ似合うサマースーツ然としているのだが、春夏のみならず初秋もアリなんだとか。確かに、ヘビーウエイトのリネンに明るめのブラウンスエード靴はマッチしそうだし、Vゾーンを落ち着かせパナマ帽を外せば初秋のリゾートスーツとして粋ではないか。

また、スーツをばらしてジャケットとパンツを別々に着てもよさそうだ。ベージュのリネンジャケットにミディアムグレーのトロピカルウールパンツにスエード靴なんて9月の装いにピッタリだし、リネンとシルク混紡のフェアアイルベストにベージュのリネンパンツを合わせれば正に季節の先取り。

9月。まだまだうだるような暑さが続く都会を離れ、夜は厚手のリネンスーツが心地よい郊外のバーでひと足早い秋を感じたい。



[MEN’S EX 2019年9月号の記事を再構成]

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