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加藤とにかく今はクラシック音楽を普及したいという一心で活動をされているんですね。

宗次他の音楽に偏見があるわけではないんですが、クラシックは聴くと優しい気持ちになるし、そういう人が増えると世の中も優しくなりますし(笑)。一方でクラシックを取り巻く状況はけっこう厳しいものがあって、廃れさせたくないですしね。とにかく自分のことはどうでもよくて、人に喜んでいただきたいんですよ。

加藤ココイチの経営もそのようなお気持ちで?

宗次そうですね。私はもともと不動産業をやっていて、妻が社交的な人で喫茶店をやりたいと。だったら、私は不動産業で妻は喫茶店の両輪でいいかなと思ったんです。でも、手伝いに行った初日に私まで喫茶店業に魅了されてしまって(笑)。お客様と接する中で日々の喜びがいっぱいあって、不動産業はどうでもよくなってしまい、数ヶ月後に廃業しました。しかもやる以上は順調に成長させたいので、ココイチを退いた最後には「全てやり尽くした」と思えるほど働きましたね。

加藤喫茶店からカレーハウスにはどう繋がっていったんですか?

宗次喫茶店の売り上げを伸ばそうと出前に力を入れるようになって、そこで出していたカレーの評判がよかったので、喫茶店の3号店をココイチの1号店としてオープンしたんです。最初は細々と、それでもお客様に喜んでもらうためにやっていると、だんだんと口コミで広がって、やがて繁盛店になる。どの店もその繰り返しでしたね。立地にこだわっている余裕もなかったですし、市場調査なんかも一度もしたことがない。

加藤いちばん大事にされていたのはやはり接客ですか?

宗次はい、それだけは譲れませんでした。今の宗次ホールも年間350から400回の主催コンサートを行っていますが、木枯らしが吹こうが体調が悪かろうが、大半はホールの入り口に立って「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」「こんにちは」と声を出し続けています。アンコールが終わると今度は飛び出て行ってお見送り。その後は演奏家さんにもお礼の挨拶をしに行きます。

加藤ところで宗次さんがココイチを退かれたときには全国で何店舗に達していたんでしょう?

宗次ちょうど800店舗です。

加藤それはすごいですね。でも組織が大きくなるにつれて、ご苦労もおありになったのでは?

宗次今もそうですが、基本的に今日は昨日、明日は今日の続きをやればいいという考えなんです。大前提として「明日は今日よりよくしよう」という真剣さがないといけませんが、現場を大事にすれば、必ず明日のヒントが見えてくる。だからコンサルタントの先生に頼ったこともないですし、大きな夢より達成可能な目標を持つようにして、毎年毎年、必達必達で目標に到達して、その繰り返しで奇跡が起こって、結果的に夢みたいなことが実現するというのかな。

加藤そんな宗次さんのやり方に異論が出たりしたことは?

宗次出たとしても聞きません(笑)。一軒目からお山の大将でやってきたので、私の経営はトップダウンばかりでした。でも、それで結果が出ていたし、ココイチは売り上げも利益も見事な右肩上がりです。だから「経営者はよそ見をしないで一生懸命やりましょう」と言っているんですけど、「仕事だけが人生じゃない」と誰も真似しようとしない(笑)。でも、経営者なんだから、会社がうまくいくことがいちばんの幸せじゃないですか。経営者ががんばれば、社員だってその姿を見て付いてきますよ。

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