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走行中のレーシングカー

思い通りにならない操作。 それが余計に熱くさせる

そうこうしているうちにあっという間にサーキットに到着。カートの操作方法は極めてシンプルだ。クルマと違うのは左足でブレーキを踏むことぐらいで、ギア操作はない。もちろん、現代のクルマに当たり前のように備わっている電子デバイス類は皆無。個人的にはこれがカートの醍醐味だと思っている。ここ20、30年ぐらい発売されたクルマは運転する人を見えないところで細かくサポートしてくれている。ハンドルを切りすぎた時やブレーキを踏みすぎた時に、横滑りやスピンをしないように様々な制御を働かせている。まっすぐ走る、効率よく加速することさえ制御しているクルマも多い。そして大抵の人は普段そのことを意識することはない。よく出来たもので、クルマに助けてもらっている感覚もない。ところがカートはすべてがそのまま挙動に現れる。運転技術がダイレクトにでるし、簡単にスピンもする。

最初に撮影を終わらせて、早速遊びの時間だ。カートに初めて乗る者もいたのでまずはコース取りから覚えるべく、スタッフの方に先導してもらい、徐々にペースを上げていく。不慣れな人の走りを後方から見ていると、最初は恐る恐る走っているから亀のように遅い。しかしちょっと慣れてくると今度は逆に荒くなる。コーナーの手前で十分に減速しなかったり、出口でアクセルを踏みすぎたり、ハンドルを切りすぎてアンダーステアを出したりテールを滑らせたりスピンしたり。本人は目一杯走っているつもりなのだろうが、タイヤを滑らせるのはタイムロスに直結する。タイヤが滑るか滑らないかのギリギリを使ったスムースな走りがカートで好タイムを叩きだすコツだ。

そうやって偉そうに他人の走りの評論をしつつ、自分もタイムアタックを敢行した。結論から言うとタイムが一番速かったし、まわりからも「さすがですね」と褒められはした。タイムそのものも悪くないらしい。しかし、本人はまったく納得できていないし、もっと速く走れるような気がする。そう思って何度もチャレンジするのだが、一定のタイムになるとそれ以上はなかなか伸びなかった。結局日暮れまで交代しながら走ったのだが、今回も毎回恒例の「体の限界・体力の限界」がやってきた。カートはサスペンションがないので路面からの衝撃をダイレクトに受けるし、速度がある分、強烈な横Gがかかるため腕と首が悲鳴をあげはじめる。自分のタイムの限界も大体見えてきたところでお開きとした。

レーシングカートを走らせると、クルマの運転の楽しさと難しさを改めて実感できる。そして今のクルマのありがたみも一層感じることができる。スパルタンなモデルではあるものの、さらにスパルタンなレーシングカートに乗った後では911 カレラ Tがとても優しいクルマに思えた。「やっぱりスポーツカーっていいな」。こんなに強く思ったのは久しぶりのことである。

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星のや
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