新しく追加されたクロスオーバーSUVの実力とは?
SUVとひと口にいわれるが、昨今ではあえて4WDを用意するでもない街ヨンク(風)のFFの2駆ベースを「クロスオーバー」と分類したりする。フランスではベースとなるハッチバック・モデルからフロアやルーフごと背が高くなったことを踏まえて、「シタディーヌ・シュールエレヴェ(citadine surelevee)」と呼んだりもする。シタディーヌとはBセグ・ハッチバックのことで、シュールエレヴェとは「持ち上げた」の意味だ。DS 3クロスバックはこのジャンルにおける最新の一台であり、結論からいってしまえば、その洗練ぶりは群を抜いている。
国際試乗会が行われたモナコで、初めて陽光の下で実車を目の当たりにした時、その絶妙なサイズ感と同時に、写真よりグッド・ルッキングであることに気づいた。全長4118×全幅1791×全高1534mmの外寸は、ミニ・カントリーマンやアウディQ2と比べても前後左右がコンパクトであるばかりか、日本の立体駐車場でも難のないボリューム感だ。しかもアンテナはルーフパネルの塗装膜の下に印刷されているため、出っ張りがなく日常的に気にしなくてよい点も、些細ではあるがよく練り込まれている。
DS 3クロスバックが既視感を漂わせない理由のひとつに、外径690mmという、このクラスとしては超大型タイヤを履く独特のプロポーションが挙げられる。クルマのデザイナーは素描の段階で、必ずといっていいほどホイールアーチとの間が詰まった大きなタイヤを描くものだが、プロダクトとして生産可能ならしめるため、市販バージョンに近づくにつれて妥協を余儀なくされる。ところがDS 3クロスバックは18インチホイールなら215 /55R18というBセグらしからぬサイズで、しかもミシュランのプライマシー4という通常なら上位機種のサルーンが履くようなタイヤを与えられている。逆にいえば、バネ下重量は増すであろうタイヤ&ホイールを、あえてBセグの車格で選び取ったにも関わらず、見事に履きこなしているのだ。