ポップアップ「Metropolis」のイメージはどうやって生まれた?
平澤:今回、この「メトロポリス」というテーマは、どのようにしてひらめいたのですか?
サラ:以前日本に滞在中、ホテルの高層フロアの窓から外を見下ろしたとき、遠くに高層ビルが立ち並んで、その合間に雲が流れているような雰囲気がとても美しいと感じました。雲の上はとてもリラックスして時間が止まっているようでマジカルな空間である一方で、雲の下には慌しく道を行き交う人々の喧騒がある。そんなリラックスな時間と忙しい時間の「大都会」を表現したいと考えました。その2つがミックスしている感じは、コンテンポラリーでありながらタイムレスな、ヴァレクストラの鞄が持つ物語に通じるものがあると思うのです。それで今回は、会場に雲をイメージしたスモークもかけているんですよ!
平澤:新作の「K-Val Tote」(ケーヴァルトート)についてお伺いしたいのですが、この素材は、アーカイブの素材と聞きました。
サラ:今から6〜7年前、とにかく軽くて機能性の高い鞄を作ろうということになり、レザーのみに捕らわれず、NASAや防弾チョッキやヨットの帆などにも使われるケブラー素材を使うことにしました。
平澤:ずっと革の上質なアイテムを作ってきたヴァレクストラが、革以外の素材を使って鞄を作るということに、抵抗はなかったのでしょうか?
サラ:もちろん、今でもヴァレクストラの根幹となるのはレザー製品です。しかし、今の時代、人々のライフスタイルは多様に変わってきました。仕事をしながら帰りにはジムにも行く、出張や旅をする機会も増えてきている、そういった常に動いている人たちのためには、革以外にもセカンドバッグ的に気軽に持てる「Easy Bag」も必要なのではないかと思うのです。Super light,Super perforamance,and washable.—— この要素は、現代人の生活にとてもフィットするものだと思います。
平澤:確かに、実際持ってみるとあまりの軽さに驚きです! これならくるくる丸めて出張トロリーに入れたりもできるし、ウエットスーツのような素材で濡れてもOKだから、雨の日やジムに行くときなどにも使えますよね。デザイン的にこだわった点はどこですか?
サラ:ヴァレクストラが長年モノ造りにおいて大切にしてきたDNAは、「Beauty+Functionality」(美しさと機能の融合)です。ここで忘れてはならないのは、「革でない新しい素材で、どうヴァレクストラらしさを表現するか?」ということでした。そこで、レザーグッズと同様に「カラーパレット」にこだわっています。白や黒といったシンプルな色から、イエロー、オレンジ、グリーンなどのビビッドカラーまであるので、レザーバッグと同様に選ぶ楽しみがあります。意外だったのですが、日本ではレザーでもカラフルなアイテムがよく売れるんですよ。これから夏のシーズンになりますから、明るい色は私個人的にもオススメです!
平澤:ユニセックスで使えるシンプルなデザインもいいですね。表面の大きなポケットも印象的です。
サラ:このポケットは、「窓」をイメージしました。パスポートや携帯電話など、すぐに取り出したいものを入れておけるので非常に機能的です。それでいて、よーく見てみてください、ポケットの門は左下が少しラウンド、右下はスクエアと、実はアシンメトリーになっているんです。そして通常は製品の内側に施されるシリアルNo.は、あえてポケットの右上に出してデザインにしてみました。それにより、1つ1つ鞄が作られてきたストーリーを表現することができます。こんなさりげない遊び心も、ヴァレクストラの美学なのです。