バーゼル取材 DAY1
意外性と美学とが共存する
ブルガリの勢いが止まらない。1月のジュネーブでも、魅力的なニューモデルを発表していたブルガリだが、3月のバーゼルワールドでは、さらにパワフルな新作を展開していたのだった。
特に目を引いたのが「オクト フィニッシモ オートマティック」のケースバリエーションの素晴らしさだった。不思議な光沢を持つ18Kゴールド、そしてこれもまた見たこともない仕上がりのSSモデル。ケースの表面処理がごく微細なマット仕上げになっているのだが、それが不思議な光の反射をしているのであった。SS素材の上にゴールドをプレートし、さらにその層の上にロジウムをコーティングするなど、複雑な処理を施した結果というのだが、見たこともない金属のようなその質感が面白い。
オクト フィニッシモ オートマティックの18Kゴールドモデル(写真4枚)
このほかにもカーボンのケース&ブレスレットのミニッツリピーター「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター カーボン」も、会場を訪れた人々の注目を浴びていた。独特の表情を見せるカーボンという素材だが、これまでリピーター時計のケースに用いられることはなかったのだが、ブルガリらしくその意外性をまとめたところはさすがである。文字盤のアワーインデックスやスモールセコンドのスケールの円周を切欠いているのは、そこからリピーターの音を前面に出すための工夫らしい。
またペリフェラル ローターという、ムーブメントの外周に自動巻きローターを配した、トゥールビヨンモデル「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」は、世界初という極薄さの1.95ミリの、スケルトナイズ加工されたムーブメントを堪能しきれるデザインとされていて見事なものだ。
オクト フィニッシモは、ドレスウォッチの新しい進化の在り方を示すもので、ブルガリ時計部門のトップ、グイド・テレーニ氏と、デザイナーのファブリッツィオ・ボナマッサ氏のイタリア人チームが、そのイタリア的美学をふんだんに発揮した結果、これまでにないスタイルを確立しえたのだと思う。
ブルガリのレディスモデル初の「ディーバ フィニッシマ ミニッツリピーター」の文字盤は、日本に来日して見た漆工芸に触発されたものだと、デザイナーが教えてくれた。それは黒を基調とした漆無理の文字盤に金の粉を蒔いた豪奢なもので、ブルガリが女性用の時計を作り出して100年目にあたる年を寿ぐにふさわしい時計となったのだ。
バーゼル取材 フォトギャラリー(写真5枚)
Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。バーゼル101年の歴史の3割を実際に取材してきたジャーナリストはそうはいない。
撮影/岸田克法 文/松山 猛