SIHH取材 DAY 3

ジュネーブ旧市街で、ひと息
取材3日目の夕方は、ジュネーブサロン(SIHH)から早めにホテルに帰ったのだが、世界文化社チームの皆との夕食の時間まで少し余裕があったため、ジュネーブ旧市街に出かけてみた。
ジュネーブでホテルに泊まると、宿泊のあいだ使える、ジュネーブ・トランスポート・カードというものをくれる。
トラムやバスなどの公共交通機関に乗るのに、いちいち切符を買う必要がないのでとても便利だし、もう30年以上この町に通っているから、およその土地勘があるので、時間があるとトラムやトロリーバスに乗って、あちこちへ出かける。
そしてその宵、旧市街方面に行くと、ふと遥かな昔に行った、カフェに立ち寄りたくなった。

そこはトラムが走る繁華街から、丘を登ってすぐのペロン広場に面した「カフェ・ペロン」という店で、1981年に初めてジュネーブに来たとき、人生初のフォンデュ・フロマージュをいただいた店。
数日の滞在のうち、毎日そこにコーヒーを飲みに行くと、店主の親父さんが「明日郊外のルッサンという町で、ワインの祭りがあるから行くといいよ」などとローカルな情報を教えてくれたものだった。
1981年の滞在では、その頃手に入れていた、ヴァシュロン・コンスタンタンの時計のストラップを新調したくて、トゥール・ド・イルの本店に行ったり、旧市街を歩いていて偶然時計オークションのアンティコルムのアトリエを見つけて、仕事ぶりを見せていただいたりと、時計好きにはたまらなく楽しい日々を堪能できた旅だったことを思い出す。
ヴァシュロン・コンスタンタンで僕を対応してくれた年配の人が、なんとその当時の社長のケトラーさんだったり、アンティコルムで仲良くなった時計師チン・ドウンさんはヴェトナムから難民としてスイスに来た人だったと聞いたりもした。
そんな楽しかった思い出に浸りながら、スイス産のビールを飲んでいたら、みんなとの食事の時間が近づいた。今日の夕食はコンフェデレーション・センターにある「ブラスリー・リップ」。ここは人気の店で、SIHHの期間は、時計関係のさまざまなブランドの顔見知りで一杯になる。そうその宵も、あの顔この顔と、懐かしい顔で一杯だったのでありました。

Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。
カフェ・ペロン 住所:Rue du Perron 5, 1204 Geneve Tel:+41 22 311 31 08
http://www.leperron.ch
撮影/岸田克法 文/松山 猛