ジュネーブ取材 DAY 2
SIHH会場を離れ、ウブロの展示会へ
毎回数多くのバリエーションに驚かされるウブロの新作の中で、今回最もインパクトが強かったのは、パリ生まれの現代アーティスト、リチャード・オーリンスキーとのコラボレーションから生み出された、「アエロ・フュージョン クロノグラフ オーリンスキー チタニウム」というモデルである。
この時計は通常のウブロ時計のデザインとは異なり、ラグ部分の面積が大きく、それを多面体に仕上げたチタニウム製のケースを、鏡面仕上げにポリッシュしたもので、まさに彫刻作品のような、アートを思わせる仕上げである。
それにしてもチタニウムという素材も、こうして磨き上げると、日本の刀剣のように見事に輝くものだ。その光輝くケースが包み込む、スケルトナイズされた黒い文字盤との、鮮やかなコントラストが素敵な一本である。
バリエーションとして、同じケースデザインを、ブルーのセラミックで作り、こちらはマイクロブラスト技法で、マット仕上げにした、「アエロ・フュージョン クロノグラフ オーリンスキー チタニウム ブルーセラミック」というモデルも同時に発表された。
リチャード・オーリンスキーは、動物やさまざまな物を、ペーパークラフトのような多面体的表現で構成し、彫刻作品を作ることで、今とても注目されている現代アーティストだそうだ。その彼の彫刻の技法を巧みに取り入れたこの時計は、まさに時間を読み取ることができるアートピースというべきものだろうと思った。
このほか今年の新作には、ゴルフを楽しむ人のために作られた、スコアをカウントできる、「ビッグバン・ウニコ ゴルフ」や、「ビッグ・バン フェラーリ カーボン レッドセラミック」など、盛りだくさんの新しいデザインが登場し、ウブロブランドの相変わらずの勢いを感じさせてくれるものとなった。


Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。
撮影/岸田克法 文/松山 猛