大人の言い訳は、相手への誠意でありやさしさであり愛です。何かとややこしくてままならない大人の日々ですが、適切な言い訳を繰り出して、自分を守りつつ周囲のストレスをできるだけ少なくしてしまいましょう。
講師
石原 壮一郎さん
1963年三重県生まれ。大人の美しさと可能性を追求するコラムニスト。1993年に『大人養成講座』でデビュー以来、日本の大人シーンを牽引している。近著に『本当に必要とされる最強マナー』『9割の会社はバカ』など。
酒の席で偉い人に暴言を吐いた
恐縮しつつ持ち上げて、「相手を怒れない状況」に追い込んでしまいたい
年末が近づくにつれ、お酒の機会が増えます。社長や役員、クライアントなどの「偉い人」と飲むこともあるでしょう。それなりに気が張ってなんだか飲んだ気がしませんが、お酒とは恐ろしいもの。つい失礼なことを言ってしまったり、無駄に反論したりしてしまうことは、よくあります。
「えっ、風邪気味なんですか。社長は頭のあたりが涼しいから」 「でも私は、あの新商品のパッケージはイマイチだと思いますね」
相手が黙り込んで、しまったと思ったときには、時すでに遅し。このままでは疎まれたりシコリが残ったり、あるいはもっと深刻な事態を招いてしまいます。
かといって、あわてて土下座して「申し訳ありません!」と謝るのは、かなりの悪手。無礼な上に「酒席の雰囲気を台無しにする空気が読めないヤツ」になって、火に油を注ぐことになります。
ここは、相手の不機嫌を深刻に受け止めていないフリをしつつ、明るい口調で、「いやあ、またやっちゃった。僕は尊敬している方ほど、相手の懐の広さに甘えて、暴言を吐きたくなっちゃうんですよね」と言ってから、口の端を引っ張って「この口が、この口がいけないんです!」と叫びましょう。
状況によっては「大好きな方ほど、そんな必要はないのにわざわざ異論を唱えて、怒らせたくなっちゃうんですよね。なんか、小学生男子みたいでお恥ずかしい」という言い方も使えます。
その上で謝罪の言葉は口にするとしても、言い訳の段階で、相手への尊敬や好意や親しみを力強く強調しているところがミソ。こう言われたら、自分の寛大さを見せつけるためにも、相手は怒りの矛を収めざるを得ません。
さらに、ダメ押しとして言っておきたいのは、このセリフ。 「こんな暴言、社長(or ○○さん)じゃなかったら、たいへんなことになるところでした」
こう言われて許さなかったら、自分が悪者になってしまいます。ただ、この場はごまかせても、根に持たれるリスクがなくなるわけではありません。くれぐれも飲み過ぎには気をつけましょう。
言い訳の極意
臆面もなく持ち上げつつ懐に 飛び込んで、相手の怒りを 封じ込めてしまう—。 言い訳は時として強迫の一種にもなる。
[MEN’S EX 2018年12月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)