圧巻のアートピース
後でわかったのだが、斜子彫りをするギヨシェ・マシーンは以来その台数が増え、文字盤などに巧妙な模様を刻むための特別なアトリエが設けられていて、そこで職人たちが作業をしているのだった。こういった昔ながらの工芸的な技術が、時計産業の中で復活し受け継がれていくのはとても結構なことだと改めて思った。複雑時計を作りこむコンプリケーションのワークショップも興味深く見学したが、そこで働いている日本人の時計師にもいろいろと話を伺えたのは良かった。
そしてもう何より素晴らしかったのは、特別な工芸的な文字盤やケースなどを製作する、メティエ・ダールのアトリエを見学できたことだ。そこにはエナメル細密画を描く人、細やかな彫金をする人、ダイヤモンドなどの宝石をセッティングする人など、『芸術的な手技』メティエ・ダールを極めた工芸家が集う。
そこは毎年発表される特別なアートピースの文字盤のモデルや、顧客からの特別注文に応じて、一品制作の時計を手がけるアトリエで、今年発表のSIHHで見た虎をあしらった文字盤の時計も、ここから送り出されたのだった。
レ・キャビノティエのコレクション(写真5枚)
ジュネーブで最も古い歴史を誇るヴァシュロン・コンスタンタンは、その歴史をこれからも新しく素晴らしい時計作りで塗り替えていくのだろう。僕自身にとっては1981年に本店を訪ねて以来の、長いお付き合いとなったブランドが、こうして素晴らしく成長を重ねていることがとてもうれしく思えたファクトリーツアーとなってくれた。
お問い合わせ先:
ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755
http://www.vacheron-constantin.com/jp/
関連記事:「いい時計ですね」と絶対言われるブランドウォッチ10本を有名店で腕に乗せてみた!
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。