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サイミンにオックステールスープ、脳裏に焼きついた楽しい”食”の体験

アサヒグリル,中井貴一さん
中井さんが”ハワイのソウルフード”と呼ぶオックステールスープの名店、「アサヒグリル」。1927年創業の姉妹店「カピオラニコーヒーショップ」から暖簾分け的に営業を始め、現オーナーのギャリーさん(左)が切り盛りして26年の歴史がある。「AsahiGrill」/815KeeaumokuSt.Honolulu ☎808‐744‐9067

もうひとつ思い出すのが、サイミン。ハワイによく行かれる方はご存じだと思うが、ハワイ風うどん、いやラーメン、いや、ちゃんぽん……。ファーストハワイの旅も半ばを過ぎ、そろそろ日本食が恋しくなりながらも、美味しい日本食レストランを探す余裕などない私たちの目に、ワイキキビーチで外国の人が、丼からうどんのような物をおいしそうにすすっている姿が飛び込んできた。すぐさまサイミンスタンドへ向かったのは言うまでもない。

出汁の利いた汁に慣れている舌には、ちょっと物足りないものの、洋食続きで胃が重たくなっていた我々にとっては、ハワイでの愛すべき日本食であった。現在のハワイには、美味しい日本食の店が増え、最近ではサイミンのお世話になることはなくなったが、今回の取材で久々に一杯。あの当時の思い出が蘇った。

因みに、現在の私のハワイでの大好物、それはオックステールスープ。私のブログでも、何度となく紹介しているのだが、ハワイに到着した最初のご飯は、アラモアナショッピングセンターにほど近いアサヒグリルのオックステールスープと決めている。飛行機旅で疲れた胃にもスープが優しく、よく煮込まれたオックステールの肉はほろほろ。それを、生姜をたっぷり入れた醤油に付けて頂く。今この原稿を書いていても、お腹の虫が鳴き出した。オーナーのギャリーさんの作るオックステールは、ハワイの中でも格別。”胃袋をつかまれた男は家庭へ帰る”の喩え通り、今やオックステールを食べるためにだけでも、ハワイへ帰りたくなる。

私のファーストハワイの、限りある思い出。楽しかったことよりも、睡魔に悩まされたこと、重いバッグを持たされワイキキを歩かされたことなど、辛かったことのほうが、鮮明に残っている。楽しかったことは……、食の記憶だけ(笑)。”苦労は買ってでもしろ”というけれど、旅でも苦労したことの方が、後にはよい思い出になっているから不思議である。計画され尽された旅より、緩めの旅が好きになったのは、この時の経験が大きかったのかもしれない。

その後、この地を訪れたのは、21歳。映画の撮影のためだった。当然のことながら、子どもの目線と成人してからの目線では、大きな違いがあった。この頃から本格的にハワイの見えざる力に魅せられていくことになる。

「着いた日の昼は必ずアサヒグリルにいって、オックステールスープを食べて……」
それで、”ハワイに着きました感”を味わえるんです

オックステールスープ,中井貴一さん
オックステールを4時間ボイルし、さらに出汁を加えて4時間煮込んだ後、冷やして余分な油を取り除き、再加熱して完成。実に手間ひまがかかっている。レギュラーサイズで$13.95と価格も良心的。

[MEN’S EX 2013年11月号の記事を再構成]
題字・文/中井貴一 撮影/RyanTFoley ヘアメイク/藤井俊二 構成/松阿彌靖 コーディネート/工藤まや(Maka’alaProductions)

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