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——佐々木蔵之介さんとは初共演?


中井:僕の父も母も京都の出身だから、僕の中には京都の血が流れてる。彼も京都の造り酒屋のご子息。なんとなく京都顔ってあるんですよ。そういう意味では、土地の空気みたいなものは、凄く合うものがあるというか。芝居をしていると、ピッチャーとキャッチャーが入れ替わるんですが、何かそれが心地よく、すんなり入れ替われるような間合いとか気を感じられて、ありがたかったです。


——坂田利夫さん、芦屋小雁さん、近藤正臣さんほか、個性的な先輩方も多数ご出演。


中井:最近、現場の中で最年長でも不思議じゃない年齢になってきました。そんなとき、今まで先輩に支えられて、自分がどれだけ安心できる組織の中で仕事をしてきたんだろう、と思うわけですよ。主役をやっていても、先輩がいてくれれば、どこか委ねられる、頼りになる人がいてくれるというね。その後輩であり続ける安心感がなくなってきた時期だけに、先輩がいるありがたさが、今回分かりましたね。頼りにするというよりは、ただいてくれるだけで幸せ、というか楽しかった。


——諸先輩方の、曲者的な味のある演技も印象的でした。


中井:蔵之介君とも「役者の仕事ってなんなんだろうね」って話していたんですが、台詞を言って芝居をすることは当然ながら、その人の持っている存在感が、もしかしたら一番大事なのかもしれないねって。どんなにたくさんNGを出そうが、その人がそこにいることによって、その役が成立するところまで達すること。大変だけれども、そこに行かなければいけないという気がしましたね。今回、坂田師匠がお出になっているんですが、本当に吉本の人たちが舞台でコケるような場面が、本番中にあるんですよ。それが笑わそうとしてやるんじゃなくて、自然と周囲の笑いを誘ってしまう。それを見て「あ、幸せだ」と思ったんですよ。俳優って人の余暇に存在している仕事だから、自分たちの心の中にゆとりがなかったら、ゆとりを画面に出すことは不可能な気がする。今回の現場にはそれがあったと思うんです。


——今後の年齢の重ね方が、少し見えてきたと?


中井:これから僕自身、衰えていって、若い頃2秒で覚えられた台詞が、何分もかかるようになったとき、周りから愛情を持って「せんぱ?い!」と言ってもらえる年寄りを目指さないといけない。それを今回、先輩方が身をもって教えてくれた気がします。自分自身、どんどんいい加減になってきている部分はあると思うし、これから先は、それを楽しめるようになっていきたいですよね。今までは自分の人生設計みたいなものは、前に行くことしか考えていなかったけれど、どこかで止まったり、なくなったりするものがあるということも視野に入れざるを得ない年齢になってくる。そのとき、健康でいようとは思わない。でも、元気でいようと思う。健康とは数値がいいことですが、元気であることは、気力がみなぎっていることですからね。

「いい加減になっていくことを楽しめる年の取り方をしたい」

中井貴一 Kiichi Nakai
1961年東京生まれ。戦後の名優、佐田啓二を父に持つ。1981年『連合艦隊』で映画デビュー。俳優として映画、テレビドラマ、舞台、CMでの活躍に加え、NHK『サラメシ』のナレーション、M.E.誌上で不定期に連載中の『好貴心』も大好評。昨年、韓国で制作・放送されたドラマ『記憶〜愛する人へ〜』をリメークした、フジテレビとジュピターテレコムの共同制作ドラマ『記憶』に敏腕弁護士役で主演。3月スタート。

中井貴一さん
(c)2018「嘘八百」製作委員会

『嘘八百』
「現場では必ず深呼吸します。風やニオイは芝居に影響しますから。今回の堺は……、前方後円墳のニオイがした(笑)」というほど、古墳が多い街、大阪・堺。千利休を生んだこの地を舞台に、新たに発見された利休の茶器を巡り、真贋論争と欲望渦巻く大騒動が勃発。大勝負に出た古物商・小池則夫(中井貴一)と陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)の運命は!? 1月5日全国公開(配給 ギャガ)。





[MEN’S EX 2018年1月号の記事を再構成]
撮影/熊澤 透 スタイリング/村上忠正 ヘアメイク/藤井俊二 文/まつあみ 靖 撮影協力/EASE

※表示価格は税抜き

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