
20世紀初頭から“ウェルビーイング”の理念を提唱
1931年、ポール・ニーハンス博士がスイス・レマン湖のほとりのモントルーにエイジングケアのための“クリニック ラ・プレリー”を開設した。長寿サイエンスの聖地として、その健康寿命に関する画期的な研究と治療が評判となり、各国の王族や富裕層たちがこぞって訪れるようになったという伝説のクリニックだ。

今でこそ、“ウェルビーイング”といって、ただ長生きするだけではなく、健康に過ごせる時間をいかに長くするか、ということが議論されているが、1931年の段階でいち早くポール・ニーハンス博士は“健康寿命”に着目していたということは称賛に値するだろう。

26万円を超えるリュクスなクリームの実力はいかに?
そんな英知を結集し、クリニックに訪れることができない人でも自宅でケアできるようにと誕生したのが、今日のコスメブランド“ラ・プレリー”である。中でもアイコニックな存在は、希少な“キャビアエキス”を配合した“スキンキャビアコレクション”だ。1987年に誕生したこちらは、名だたる俳優や政治家、実業家など多くのセレブリティたちをはじめ、美容に敏感な人々を今なお、魅了し続けている。
このブランドには、スキンキャビアの他にも本物の金を使用した“ピュアゴールドコレクション”や、白金、コロイド性白金の“プラチナムレアコレクション”などリュクスの粋を極めたコスメが存在し、人気を博している。前者のクリームは12万6280円(50ml)、後者は22万8800円(50ml)とその価格もまた、他のものとは一線を画す。
そんなラ・プレリーからまた新たな伝説となる逸品が登場する。それがこの“ライフマトリックス HR クリーム”。こちらは、26万6860円(50ml)とまた、ブランド内での最高峰の記録を更新した。いきなり価格の話から始めるのも下世話ではあるのだが、やはりその数字にも驚きは隠せない。

ここからは、その世界最高峰クラスのクリームの謎を紐解くために、“長寿サイエンス”をキーワードに本社から来日したイノベーション&サイエンス ディレクターであるジャクリーヌ・ヒル博士にお話をうかがった。

2014年にラ・プレリーへ入社し、製品開発グループの一員としてコンセプト設計や開発、有効性試験を担当。また、トレンドやイノベーションを通じた製品ラインアップなどの戦略的ディレクションにも貢献している。オックスフォード大学の有機化学専攻において博士号を取得。
――高級クリームは他のブランドにも多数、存在します。一体、どのように他とは違うのでしょうか?
ヒル博士「まず、長寿クリニックであるクリニック ラ・プレリーが、長年向き合ってきたことで培われた医学的な専門知識と、我々の細胞機能の最適化と再生に関する研究成果を合わせることで開発されているということでしょう。
今回の画期的なクリームには、独自の“マトリックスコンプレックス”が配合されています。この複合体は、肌が可能な限り長く若々しくいられるよう、長寿の原理を肌に落とし込むようにと開発されたものです」
――長寿の原理を落とし込むというのは、どういう意味ですか?
ヒル博士「少し難しいですよね。まず、我々は生命の本質は“情報”であるという発見をしました。 細胞の生命は、すべて“細胞情報”に基づいており、それらは老化の根本原因であると同時に、若さを保つ鍵でもあるんです」
――一体、その細胞情報とは何でしょうか?
ヒル博士「細胞情報はDNAやRNA、タンパク質など、何千もの個々の生体分子の特定の構造を符号化したものです。これらの生体分子が“細胞情報マトリックス”を構築しています。
若い皮膚では生体分子は、すべての細胞が最適に機能するのに適切なレベルで利用可能で健康な状態ですが、年齢を重ねると細胞による情報の可用性に混乱が生じます。
それは年を取ると情報を伝える生体分子が利用できなくなったり、細胞が最適に機能するために必要なレベルに達しなかったりするということを意味しています。その結果、皮膚細胞の健康寿命が短くなり、皮膚自体の健康寿命も短くなるというわけです」
――なるほど。年を重ねても細胞情報が若い頃と同じようなレベルになると、最初のお話に出てきた“肌が可能な限り長く、若々しくいられる”ということに繋がるのですね。では、新しいクリームとその特徴について、もう少し具体的に教えていただけますか?
ヒル博士「今回のキー成分は、ラ・プレリーのシグネチャーでもある高濃度の“セルラーコンプレックス”に加え、シャクヤク根やトウキンセンカ花エキスで構成された複合成分“マトリックスコンプレックス”です。
そんな成分を含んだこのクリームが、細胞情報マトリックスにどんな影響を与えるのかを調べるため、我々は1万8000以上のRNA生体分子を調査しました。すると306の生体分子が加齢による影響を受けていることを発見しました。
そこで、2つのエフィカシーテストを行ったのです。ひとつは細胞そのものの解析と、もうひとつは表皮の分析について行いました。
まず、細胞についてですが、これは非常に複雑な臨床研究を重ね、その結果、細胞情報レベルにおいて若い皮膚のレベルに近いレベルへとリセットされたことを発見しました。年齢の影響を受ける306のRNAのうち、13%にもあたる41のRNAのレベルがこのクリームのおかげで若い皮膚のレベルに近いレベルにリセットされたんです。
さらに詳細に調べてみると、多くのRNAが若々しさの寿命をかなえる、①エネルギー供給②DNA補修③オートファジー(老廃物の除去)④皮膚の免疫システム⑤細胞再生の5つの経路にも関与していることもわかりました。つまり、細胞機能の最適化に貢献しているということです」

――それは、すごい! もうひとつの表皮の分析に関してはいかがでしたか?
ヒル博士「2つ目の大きな発見は、このクリームが被験者グループの何百ものRNA生体分子のレベルを個別に調整したことです。当然、細胞情報マトリックスは、人によって異なります。しかし、この“ライフマトリックス HR クリーム”なら使う人によって個別に作用してくれるのです」
――ある人はシワに悩み、ある人はたるみに悩むなど、人によって加齢のサインが異なるのは、細胞情報レベルの差ということなんですね。個別の悩みにいちいち対応しているとキリがなくなりますが、包括的に細胞情報のレベルが下がっているところを捉えて、ピンポイントにケアしてくれるのはありがたいです。
ヒル博士「子どもやトラブルがまったくないという人にこのクリームは必要ないかもしれませんが(笑)、30代で初期老化を感じ始めた人や、エイジングサインがいろいろと出てくる50代以上の方など幅広い年代で使っていただけると思います。もちろん、性別も問いませんよ。
しかも、臨床試験で塗布後15分で肌のキメが整い、肌がより滑らかで柔らかくなった、肌が落ち着いたなどという感想をいただきました。さらに8週間連続して使うと、肌が活性化し、コラーゲン生成の増加やハリと弾力性が向上しているのも確認できています」
――15分! そのスピード感は、すぐに結果を求める消費者たちが多い、今の時代に即していますね。そういえば、このクリームを使ってみたら、テクスチャーも非常に特徴的でした。最初はしっとりしているのに、塗ると肌の上でほどけるようにとろけて気持ちよく広がります。
ヒル博士「実は、最初からその質感の違いは狙って作りました。76回ものフォーミュラの試験を経てたどり着いた“二重融点”というユニークな特徴を備え、手に取った時と肌にのせた時の2段階で溶けていきます。軽くのばせることで、若い方にも親しんでいただけるように、と」
――それにしては、価格が若い人向きではありませんが(笑)……
ヒル博士「たしかにそうですね。でも、ニューリッチな方々も増えていますしね(微笑)」
――最後に男性がスキンケアをする際、気をつけるべきことはありますか?
ヒル博士「男女でスキンケアの方法を変える必要はありません。男性のほうが女性に比べて真皮が厚いので老けにくいという特徴はありますが、何もしなくてよいということではないのです。予防医学の観点から30歳を超えたらスキンケアをきちん行うのがよいと思います。
日本ではどうかわかりませんが、ヨーロッパの男性を見ているとスキンケアに関してはとても怠け者が多い印象です。できるだけ早い時期に始めるのがよく、せめて日焼け止めだけは使って欲しいですね」
クリニックでも使われる憧れのクリームで日々のケアが変わる!
実際、この新製品“ライフマトリックス HR クリーム”は、“クリニック ラ・プレリー”で受けられる“リバイタリゼーション”と“リバイタリゼーション プレミアム”という長寿プログラムの中に採り入れられている。
これらのプログラムは、肌を含む、脳、心臓、概日リズム(=睡眠)、代謝、免疫、マイクロバイオータ(=微生物叢)の7つの主要組織の相互関係に働きかけることを目的としているもの。そんな中に採用されているのは実力を備えている証拠だろう。
スイスまではなかなか足を運べないという忙しいエグゼクティブもこのクリームなら難なく生活に採り入れられる。毎日のスキンケアで細胞情報をアップデートして、若かりし頃の充実した印象へと導いてくれるのなら、26万円超えの投資もうなずけるはずだ。

編集者を経て独立。テレビやラジオなどメディアへの出演、雑誌やウェブメディアへの執筆、イベントや講演、All Aboutではメンズコスメガイドを務める。またメンズ美容のコンサルタント、コスメプロデューサーとしても活躍。国内外のスパにも造詣が深い。美容を通じて男性が自分らしくいられるライフスタイルの情報を発信している。著書に『一流の男はなぜ爪を手入れするのか?』(宝島社刊)などがある。

DATA
ライフマトリックス HR クリーム
50ml 26万6860円/ラ・プレリー
公式サイト
インタビュー・構成・文/藤村岳