現在、最も力のあるイタリア靴ブランドのひとつとして世界的な知名度を誇るサントーニ。だが、その歴史は40年弱と以外にも浅い。

サントーニはイタリア・マルケ州にて、1975年に誕生した。イタリアを代表する靴の名産地として知られるかの地で、創業者のアンドレア・サントーニは腕利きの職人を集め、高級靴工房としてブランドをスタート。創設時から「ファット・ア・マーノ(手仕事)」を理念として掲げ、伝統の職人技を堅持する一方で、ブレイク(マッケイ)、ボロネーゼ、グッドイヤー、ハンドソーンなど、あらゆる製法を導入。同時にハンドペインティングの技法や個性的なデザインなの演出面にも磨きをかけていき、他に類を見ないほど幅広い表現力を確立。短期間でめきめきと頭角を現し、イタリア靴の代表格にまで上り詰めていったのである。

日本にサントーニが始めて輸入されたのは1994年のこと。当時のクラシコ・イタリアブームも追い風となり、上陸間もなくしてトップブランドとしての地位と知名度を確立した。さらに、1995年に現社長のジュゼッペ・サントーニが生み出したレザースニーカー「メンフィス」も大ヒットを記録。その後の高級レザースニーカーブームの火付け役となり、靴トレンドを牽引していった。
あえて定番を作らない先進性こそサントーニ躍進の原動力だ
現在は本国イタリアとアジア諸国を中心に、直営店を構えるほどに成長したサントーニ。今もなお、新たなプロジェクトを次々と始動させ、ファンに驚きを与え続けている。メルセデスAMGや時計ブランドIWCといった異業種とのコラボで話題を集めたのも記憶に新しい。

他の高級靴メーカーがロングセラーの定番を中核に据えてブランドを展開する中、サントーニは同一モデルの継続をほとんど行わず、次々と新作を発表してラインナップを刷新し続けている。このような代謝の激しい新作展開も、同社を急速に発展させた柔軟な表現力と驚異的な製法バリエーションがあって初めて成せる業だ。ひと処に留まらず常に変化し続けることこそ、サントーニのアイデンティティなのである。
10種類以上もの製法を駆使する類まれな技術力
サントーニの大きな特色として、製法のバリエーションが非常に多彩なことが挙げられる。中心となるのはブレイク製法であるが、ボロネーゼやブレイクラピドなど特殊な製法から英米靴が得意とするグッドイヤー製法、さらにはビスポーク由来のハンドソーン製法まで、そのバリエは実に10種類以上。ベーシックからデコラティブまで変幻自在な表現は、この多彩な技術が支えているのだ。
