日本でも2027年から対応予定。充電インフラの“質”を変える戦略的転換

BEVを巡る議論がスペックから“使えるかどうか”へ移り変わる中、ステランティスが示した一手は、電動時代の実用性を大きく押し上げるものとなりそうだ。同社は2025年11月18日、北米、日本、韓国を対象に、一部のBEVモデルに北米充電システム（NACS）を採用すると発表。これにより、2026年以降はテスラのスーパーチャージャーネットワークへのアクセスが順次解禁されるという。

NACS対応によって、将来的に5カ国で合計2万8000基以上のスーパーチャージャーが利用可能となる。これは単なる“充電器の数が増える”という話ではない。テスラが都市部から地方まで張り巡らせてきた高出力ネットワークへ、他ブランドのBEVが直接アクセスできるようになる意義は大きい。長距離移動を前提とする北米はもちろん、日本や韓国でも、充電拠点の確実性はBEVを日常の足として選ぶ際の大きな決め手となる。

対応開始は北米が2026年初頭、日本と韓国が2027年から。第1弾として、ジープ ワゴニア Sやダッジ チャージャー デイトナといった、各ブランドの電動化を象徴するフラッグシップ級モデルがスーパーチャージャーへの接続に対応する。続いて、2026年発売予定のジープ リーコンなど新型BEVへも順次拡大される計画だ。既存ユーザー向けのアダプター対応などの詳細は後日の発表に委ねられるが、選択肢が広がることは確実である。なお、対象地域における現行BEVモデルのネットワーク利用に関する情報も、追って明らかにされる予定だ。

今回のNACS採用は、規格変更そのものが目的ではない。ユーザーが「どこで、いつ、どう充電するか」を柔軟に選べる環境を整えるための手段である。充電はEVライフの中核に位置づけられ、その自由度は所有満足を大きく左右する。スーパーチャージャーへのアクセスは、その“自由度”を現実的なレベルで押し広げる取り組みと言える。

もちろん、規制動向やインフラ整備の進捗、さらには供給制約など、見通すべき課題は残る。それでも、EVを移動のパートナーとして成立させるための条件を着実に整えようとする姿勢は明確だ。ハードウェア中心の競争から、実用性と信頼性を問う成熟のフェーズへと移る今、ステランティスの今回の判断は、その潮流を象徴する重要な一歩となる。