[ブランド学/1]
ブランド創立50周年、その軌跡を考える
アルマーニはなぜいつの時代でも“憧れ”であり続けるのか
帝王と称され、現代メンズファッションに絶大な影響を与えてきたアルマーニ氏。ブランド創立から半世紀を経ても、人々を魅了し続けたその美学の核を探る。
横断する美学
アルマーニ氏の活躍の舞台
アルマーニ氏の活動の場は服のみにとどまらず、幅広く多岐にわたる。映画・建築・社会貢献まで、横断するその活躍の舞台を辿る。
In Society
都市に緑を、街に文化を
アルマーニの社会的使命
社会貢献活動にも見られるアルマーニ氏の哲学
そして最後に、アルマーニ氏が注力している活動として特筆しておきたいのが、社会に対する慈善活動だ。実はアルマーニ氏は、SDGsがまだ広く語られる以前から、企業としてはいちはやく医療・教育機関などへの支援を続けてきたことでも知られている。

直近では、ミラノ市の環状トロリーバス路線を“緑の帯”へと変えていくプロジェクトを支援している。舗道や停留所周辺に木陰と植栽を増やし、雨水を地中へ戻しやすくするなど、暑熱や豪雨に強い街づくりに寄与している。また、2022年にはサステナビリティの活動に特化した専用サイト「アルマーニ/バリュー」を立ち上げ、都市緑化をはじめとする様々な取り組みを体系的に発信している。

一方で、自らの創作と美学を社会と分かち合う試みにも積極的だ。ミラノの常設施設「アルマーニ/シーロス」では、アーカイブや写真、ドローイングなどのクリエイションをテーマ別に一般公開をしている。このように、ひとつのブランドがここまで体系立てて自らの表現を共有する場を設ける例は稀ではないだろうか。さらに今年のヴェネツィア国際映画祭では、歴史的ヘリテージを開くデジタル・プラットフォーム「アルマーニ/アルキビオ」を発表。第一弾として、ミラノ随一の芸術の殿堂・ブレラ美術館にて2025年9月24日から特別展を開催する予定だ。50年にわたるクリエイションの中から選び抜かれた約150体のアーカイブ・ルックが一堂に会し、ソフトで構築性を排したジャケットやミニマルな美学に貫かれたドレスが、クラシックアートと呼応するように配置されるのだ。
革新的でありながら、社会貢献にも精力的。都市を整え、文化を開くための支援を惜しまず、次世代へ価値を継承する。そんなアルマーニ氏の姿勢からは、彼独自のアンダーステートメントな美学を永遠に感じることができるだろう。
[MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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